多数の著書などを通して、がんの情報を広く発信している東京大学医学部附属病院の中川恵一氏。最近では、著書『コロナとがん リスクが見えない日本』(海竜社、2020年10月)を通じて、コロナ禍におけるがんとの向き合い方に警鐘を鳴らしている。同時に中川氏が力を入れているのが「がん教育」だ。がん教育が明記された新学習指導要領の作成に深く関わった他、富士通が全従業員7万人を対象に2020年1月に開始したがん教育にも携わった。今後の企業経営において、がんは避けられない大きな問題になると同氏は指摘する。

(聞き手は小谷 卓也=Beyond Health)

「これは画期的」、学生向けのがん教育

学校での「がん教育」が、日本でも本格的に始まることになった。

 がんは早期に見つかれば見つかるほど生存率が高まる。例えば、乳がんは自分で触れてしこりを確認することができる。月経が終わって5日目ぐらいが最適とされているが、定期的にセルフチェックをしている人の割合は驚くほど低い。早期発見すれば9割以上が助かる病気であるにもかかわらずだ。

東大病院の中川氏(写真:皆木 優子、以下同)

 そこには日本のヘルスリテラシーが低いという背景がある。ヘルスリテラシーに関する国際比較を見ると、対象15カ国の中で日本は最下位だった。「医師から言われたことを理解するのが難しい」との質問では、オランダの8.9%に対して日本は44%。さまざまな質問の平均点を見ると、日本はインドネシア、ミャンマー、ベトナムよりも低かった。

 そうした中で、保健体育科の新学習指導要領に「がん教育」が明記され、中学校では2021年度から全面実施、高校では2022年度から順次実施されることになった。これは画期的なものだ。この指導要領の作成には私も深く関わったが、内容は世界でトップと言っていいだろう。