「行政の前例にとらわれない提案を」と依頼

逆に、課題と感じているのはどのような部分でしょうか。

 これは我が市に限ったことではありませんが、どこの自治体もがん検診未受診の方、あるいは定期的にがん検診を受けられていない方を抱えています。がん検診は、早期発見を促すためにも受診率を上げることが重要になってきます。

 行政独自の施策だけではなかなか受診率が向上しないとの大きな課題がありました。そこで平成23年度(2011年)頃から、民間企業のキャンサースキャンと連携して、がん検診受診率向上に向けた取り組みを続けています。

具体的にどのような取り組みですか。

 まずは、マーケティング手法に基づく個別勧奨通知の送付から始めました。「通知を受け取る市民が求めている情報は何か?」という視点から働きかけるもので、より市民の心に響くような文面を取り入れながら受診行動につなげます。

 我々もキャンサースキャンに対し、受診行動につながるのであれば行政の前例にとらわれない提案をしてほしいと依頼しています。それらの柔軟な提案をいただいて行政の施策に生かしていくことが大事だからです。

 個別の対策としては、大腸がん検査キットの事前送付を実施しています。大腸がんは女性のがん部位別死亡数で最も多いがんですが、通常、受診までのルーティンが最初に医療機関に検査キットを取りに行き、便を採取してあらためて届けるなど、やや手間がかかります。検査に至る手続きが受診の妨げになっていました。

 そこで特定健康診査(メタボ健診)の受診券を送る際に、前年度の受診者に大腸がんの検査キットを同封することにしました。また、特定健診と大腸がん検診を同時に受けた場合は、セット受診として大腸がん検診の自己負担額を700円からワンコインの500円に減額し、インセンティブを示す工夫も凝らしています。その結果、大腸がん検診の受診者が約2万人増え、受診率が10%向上する成果を得られました(関連記事:「たまたま検診を受けていない」、その人の行動はどうしたら変わるのか)。