大腸がん検診で「SIB」を導入したワケ

八王子市の大腸がん検診では、国内初となったSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド)を活用した取り組みも話題となりました。

 これまで話したようにさまざまな施策で受診率の向上を図ってきましたが、がん検診は市が補助をしていますので当然コストがかさみます。限られた予算の中で事業を進めるため、行政コストを抑え、社会的課題を解決する方法としてSIBを導入しました。受診率を成果指標として支払額を設定し、成果の達成度に応じて事業を担当したキャンサースキャンに委託料を支払うものです。

 SIBでは、特定健診の問診や結果から大腸がんのリスクが高い飲酒、肥満、運動不足、喫煙といった項目をピックアップし、それら高リスクを抱える対象者に対して個々に「大腸がんにかかる可能性」を通知するオーダーメイド勧奨を実施しました。これは非常に効果があり、通常であれば9%程度の受診率であるのに対し、26.8%まで受診率が向上しました。委託料は244万1000円でしたが、最終的にはそれを上回る医療費適正効果をもたらしてくれたのです。

それは大きな成果ですね。

 これら一連の受診率向上の施策は、「ナッジ」と呼ばれる行動経済学の理論を活用したものです。もともと、肘でそっと押して注意を引くといった意味ですが、昨今では自発的に望ましい行動を選択するように促す手法として注目されています。

 ナッジの利点は、多くの予算をかけることなく、少しの工夫で既存の枠組み内でも効果を生み出せること。今後も民間事業者、あるいは医療機関と連携しながら、効果的な受診勧奨をしていきたいと思っています。

 ナッジが活用できるのはがん検診に限りません。例えば納税、環境問題、防災対策など、さまざまな施策に効果があると聞いています。庁内でもナッジの活用について議論を重ねながら、可能な限り市民の皆さんが健康で豊かな生活を送ることができるような取り組みを続けていくつもりです。