人生100年時代という言葉を近頃よく目にするようになったが、日本では健康寿命と平均寿命の差が男女ともいまだ大きい状態だ。健康寿命そのものを延伸し、幸福な人生100年時代を迎えるためには、病気を発病する前の段階である「未病」への対応や老年期に体が衰える「フレイル」への対処が重要であると考えられている。
日経BP総合研究所ではこのほど、これらの対処法として、口腔健康管理の重要性に着目したリポートを発行。ヘルスケア領域の新常識として、口腔健康管理が、超高齢化が進む日本社会にどれだけインパクトを生むかについて取り上げた。
その中では、各界をリードする識者による座談会を実施し、口腔健康管理に関し、国民に当事者意識を持って取り組んでもらうためには何からどう進めるべきかについて、様々なオピニオンを発出してもらった。参加メンバーは、医療行政や医療経済、企業の健康経営、健康まちづくり、高齢者医療、歯科医療分野の有識者、5人。以降、その模様を紹介する。
【座談会参加メンバー】
(進行は日経BP 総合研究所 副所長 藤井省吾)
※武田氏は都合により座談会を欠席されたため、後日、取材を行って再構成しました。
※田辺市長は静岡市から東京の会場へビデオ会議で参加しました。
団塊の世代が後期高齢者になる2025年問題は軟着陸しそうですが、2040年は団塊ジュニアがリタイアして65歳以上の高齢者が増えることが大きな課題です。
武田 日本の高齢者人口は、2040年ごろに3900万人を超え、ピークを迎える一方、15〜64歳の現役世代は急減し、2040年には今より1500万人減の約6000万人と推計されています。つまり、1人の高齢者を1.5人の現役世代で支えることになります。
そうした事情を背景に、政府が現在、力を入れているのが、健康寿命の延伸です。人生100年時代を迎える中、長い老後を健康で過ごすことは、持続可能な社会保障の在り方にとって 大きな課題です。また、何より最後まで生きがいを持って健康に暮らすというのは国民の願いでもあります。
人口動態は地域によってバラツキが大きいと思いますが、静岡市の実態はいかがでしょうか?
田辺 静岡市の高齢化率は全国20の政令指定都市の中で北九州市に次いで2番目に高い29.4%。その意味で、医療費の着実な増加にどう対応するかが喫緊(きっきん)の課題になっています。その中、静岡市では「健康長寿のまちづくり」を進めています。市政の5大構想の1つとして、高齢者だけでなく、全世代を対象に健康に関する問題発生の未然防止(予防)を重視する方針を打ち出しています。課題は市民の「当事者意識」で、健診も充実させていますが、受診率がなかなか上がりません。