かかりつけ歯科医による早期治療で全身の病気を予防

ここからは、かかりつけの歯科医の重要性について議論をしていきたいと思います。

 1つは歯周病対策です。平成28(2016)年の歯科疾患実態調査では、予備軍も含めると15歳以上の調査対象者の74.9%が歯周病に罹患しているといわれています。その歯周病も全身の健康との関係が明らかになっていますので、かかりつけ歯科医を持ち、早期に発見・治療することが重要です。

 ヒロシマスタディと呼ばれる研究では、II型糖尿病患者に歯周治療と歯周ポケットに抗菌剤の貼付を行うことで糖尿病の指標が改善されました。6年前の歯周病学会のガイドラインでは歯周治療はグレードBの推奨でしたが、2019年の糖尿病学会のガイドラインではグレードAに推奨されています。

 さらに、65歳以上の健常者を対象とした歯科健診に合わせて4年間にわたり認知症の認定状況を追跡した調査では、歯がほとんどなく義歯を使ってない人、あまりかめない人、かかりつけ歯科医のない人は、認知症発症のリスクが最大で1.9 倍高くなることが示されました。

全身疾患につながる歯周病のサインを早期に見つけるという意味で、歯科は健康維持のゲートキーパー的な役割を果たしますが、歯科健診の義務は高校生を最後になくなります。

歯科健診の義務化は乳幼児健診と学校健診の2つだけ

武田 歯科健診の義務化が乳幼児から児童・生徒期までなのは歴史的な背景があります。そもそも健康診断は乳幼児期、児童・生徒期に集中して行う形で整備されてきました。その後、超高齢社会を迎え、成人の健康が重視され、2008年にメタボリックシンドロームに着目した特定健診が義務化されましたが、歯科健診は含まれませんでした。しかし、これからは生涯を通じた健康づくりが一段と大きなテーマになります。私も人生の最後まで口で食べるための政策をしっかり打つことが大事だと繰り返し申し上げてきました。ライフステージに応じた歯科健診の充実を急ぐべきです。

静岡市は口腔機能の健診事業に本格的に取り組まれています。

田辺 平成30(2018)年度の静岡市における1歳6カ月の子どものむし歯有病者率は、歯科医療関係者や保健医療関係者の懸命な努力で、政令指定都市としては最も低い0.46%を達成しました。次の課題は、こうした子どもたちが生涯にわたり口腔健康管理に取り組み、長く健康な人生を過ごしていただけるかどうかです。

 そのために武器4 点セットと呼ぶものをそろえました。1つ目は先ほど述べた通り歯科保健条例を制定しました。2つ目は歯科口腔保健推進の司令塔となる「口腔保健支援センター」を設置したことで、3つ目はそのセンターの所長に常勤の歯科医師を行政担当者として迎えたことです。また、4つ目として条例に基づき「(仮)静岡市歯と口腔の健康づくり推進計画」という行政計画を令和3年3月に策定する予定です。