温泉旅館で新たなムーブメントを

御社は以前から、星のや軽井沢(長野県)の「森林養生」や星のや東京(東京都)の「深呼吸養生」、星のや竹富島(沖縄県)の「島時間養生」など、独自の滞在プログラムでヘルスツーリズムに取り組んでいらっしゃいます。

 1980年代から1990年代にかけ、海外の主だったリゾートにはスパがあり、トリートメントマッサージが行われていました。当社の「養生プログラム」はそうした流れを汲みつつ、スパの中だけでなく、食事やアクティビティなど滞在を通してトータルなトリートメントを受けていただくものです。

 疲れを癒やす。ストレスを解消する。健康上のリセットがリゾートを訪れる目的の1ですが、2030年に向け、温泉旅館によるリセットの可能性をさらに広めていくことが今後の目標の1つです。

 そもそも、私の出発点は長野県の温泉旅館です。私は、温泉旅館こそが日本のヘルスツーリズムの原点であると考えています。西洋医学が普及する前、温泉旅館は湯治や療養の場であり、今もそうした文化を継承しつつ、ストレスの多い現代人のマインドをリセットする場として活用されています。

 日常を離れて温泉でリフレッシュし、和食で体の内側からも健康を促進する。こうした日本のヘルスツーリズムが今、世界で見直されてきています。

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上は星のや軽井沢(長野県)の「森林養生プログラム」、下は星のや竹富島(沖縄県)の「島時間養生」のイメージ
上は星のや軽井沢(長野県)の「森林養生プログラム」、下は星のや竹富島(沖縄県)の「島時間養生」のイメージ
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星野代表は、「5年以内に北米」と発言されています。北米への進出は温泉旅館なのですか。

 日本の運営会社が手掛けるわけですから、やはり温泉旅館でという思いがあります。

 私が米国のコーネル大学に留学していた1980年代、日本の大手ホテルチェーンがこぞって海外展開していました。しかし、現地の人から見れば、「なぜ日本の会社がホテルをやるのか?」という違和感があります。日本の寿司職人が、パリやニューヨークでフレンチレストランを出店するようなものだからです。結果的に海外進出は失敗に終わっています。

 しかし、あれから30数年経った今、多くのインバウンドのお客様が日本の文化やおもてなしに触れ、海外でも日本食や日本酒の評価がうなぎ上りになっています。温泉旅館の進出には、またとない好機ではないでしょうか。

 そうはいっても今のところ、「週末、温泉旅館に行きたい」と考える米国人はほとんどいないと思います。ゼロに近いところからニーズを創出していく必要があるわけです。しかし、これも私の留学時代を考えると、当時は寿司を食べる米国人など皆無に近く、それが今では、米国の地方都市まで寿司店があるほどのSUSHIブームです。私は、温泉旅館もそうしたムーブメントに変えていけると思っています。

(タイトル部のImage:出所は星野リゾート)