紫外線の中でも波長の短い深紫外線は、殺菌灯など様々な分野で利用されているが、主流だった水銀ランプが2021年以降製造禁止となり、水銀を使わず効率良く深紫外線を発生させるLEDの開発が急務となった。深紫外光と呼ばれる目には見えない光。照射するだけでウイルスや細菌のDNAに直接影響を及ぼしウイルスの増殖を止めてしまうという。この新しいLEDの開発で世界をリードしているのが、理化学研究所 平山量子光素子研究室 主任研究員の平山秀樹氏だ。ウィズコロナ時代、そしてパンデミックの再来に立ち向かう技術として開発競争が加速する次世代デバイスの今を聞いた。

見える光の青色LEDから見えない光の深紫外LEDへ

 2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症は、国内外の様々な産業・市場に、大きな影響を及ぼしている。日本では、2020年4月に政府から東京をはじめとした7都府県にわたって「緊急事態宣言」が発令されたが、長引く新型コロナウイルス感染症の対応に日夜尽力する医療従事者への感謝の気持ちを伝えようと、イギリス(ロンドン)で始まった「#Lightitblue」キャンペーン。青い光でランドマークをライトアップするというこのキャンペーンは、6つの大陸、28カ国に広がり、日本国内でも東京都庁をはじめ熊本城、神戸ポートターミナル、明石海峡大橋、さっぽろテレビ塔など各地の名所に青い光が灯った。

 この青く美しい光を作り出している青色LEDが世の中に登場したのは1993年。20世紀中の実現は困難とさえ言われていた高輝度な青色LED(発光ダイオード)の開発・実用化に成功した赤崎勇氏、天野浩氏、中村修二氏がノーベル物理学賞を受賞したことは、まだ記憶に新しい。青色の実現により赤・緑・青の光の三原色が成立し、白色をはじめ、ほぼすべての色の光をLEDで作ることができるようになると、省エネルギーで長寿命なLEDはたちまち普及した。環境問題にも貢献するデバイスとして、照明だけでなく、信号機、ディスプレー、車のランプや液晶画面など幅広く活用され、産業にイノベーションをもたらし世界を大きく変えたのである。

※ LED(light emitting diode)は、発光ダイオードと言い、一方向に電圧を加えたときに発光する半導体の素子のこと。

 そして今、次なるLEDとして注目を集めているのが青色よりさらに波長の短い「深紫外LED」だ。深紫外光という目には“見えない”光を発し、ウイルスを不活化させる作用があると言う。

 「深紫外光とは、紫外線の中でも特に波長の短い光のことで、高い殺菌能力を持ち注目されています。新型コロナウイルスについては不活化の効果が確認されたという論文が発表されています」と話すのは、深紫外LEDの研究・開発に携わる平山秀樹氏。20年以上にわたり、この次世代LED開発で世界を牽引している第一人者的存在だ。