「うんコレ」というスマホのゲームアプリをご存じだろうか。腸内細菌を擬人化したゲームで、“うん”とはズバリ、うんこのこと。そして制作したのは、日本うんこ学会の「うんコレ制作委員会」。大胆なネーミングにまずは驚かされるが、その裏に秘められた志は高い。ゲームを楽しみながら病気の知識を増やしてもらい、大腸がんなどの早期発見につなげようというコンセプトだ。「おうちの診療所 目黒」の医師・石井洋介氏が仲間と一緒に約8年かけて完成させた。しかも全員が手弁当で。2020年11月にリリースされ、利用者は現在2万人を超える。

制作者代表の石井氏は、高校1年生のときに潰瘍性大腸炎を発症し、大腸を摘出して人工肛門になった経験を持つ。「突然の腹痛でトイレに駆け込む日々。常にうんこに悩まされていたが、その頃は医療の知識も関心もなく、うんこの状態と病気とが結びつかず、診断の遅れを招いた。当時の自分のような、健康に無関心な人たちに医療情報を届けるにはどうしたらいいか。そんな発想から生まれたのが、うんコレだった」と語る。

うんコレは、医療情報とエンターテイメントを合体させ、病気の早期発見とユーザー自身の行動変容を狙う。予防医療の新しい取り組みとして、石井氏らのチャレンジに期待が寄せられている。

石井洋介氏(写真:大久保 惠造、以下同)

 週末になると喫茶店にメンバーが集まって、アイデアを出し合い、キャラクターを考え、ストーリーを練る。まるで大人のサークル活動。そうして構想から8年後、一つのゲームが誕生した。腸内細菌を擬人化したスマホゲームアプリ「うんコレ」だ。

 制作に関わったのは医師、看護師、歯科医師、獣医師、研究者、エンジニア、アニメーター、イラストレーター、声優、ナレーター、音楽家など、総勢約80人。多種多様な人達が無償で参加し、それぞれの能力や特技をゲーム制作に惜しげもなく提供してくれた。登場人物や背景画を描いたのも、フルボイスの吹き替えをしたのも、BGMを作ったのも、シナリオを書いたのも、ゲームのプログラミングをしたのも、すべてボランティアだ。

 石井洋介氏は、当時を振り返る。

 「そもそもの始まりは、異業種交流会でエンジニアの木野瀬友人君と出会ったことでした。うんこゲームのアイデアを話したら『秀逸』と評価してくれ、『それなら同人サークルでもできると思うよ』と。木野瀬君の紹介でアニメプロデューサーの前田地生さんも合流してくれ、まずは3人でスタートしました。2013年秋頃のことです」