コロナ禍によるメンタルヘルス悪化を示すデータや指摘が増えている。新型ウイルス感染に対する不安や行動変容に伴うストレスは、私たちの心理面にどのような影響を与え、アフターコロナには、どんな変化が起こるのだろう。陸上自衛隊で初代心理幹部となり、組織のメンタルケアを担い、東日本大震災などのクライシス対応も行ってきた心理カウンセラーの下園壮太氏に、コロナ禍におけるメンタルの現状、アフターコロナに向けて必要な備えについて聞いた。

「不安」は慣れるが、「疲労」は蓄積する

コロナ禍の中、度重なる緊急事態宣言があり、リモートワークという環境変化もありました。厚労省は2020年に、年間の自殺者数が増加し、なかでも女性の自殺者が2年ぶりに増加したと報告しました(※1)。下園さんは心理カウンセラーとして組織や個人のメンタル支援をされています。実際に精神的に厳しい状態になっている人は増えていると感じられますか。

 明らかに増えています。新型コロナウイルスという生命を脅かす危機に対し、誰もが大なり小なり不安感を感じてきました。ただ、不安感というものは自分が直面している環境に大きな変化が起こらなければ、ある程度「慣れ」が生じます。問題なのは、不安感そのものよりも、不安感によって知らず知らずのうちに蓄積する「精神的な疲労」だと考えています。

下園壮太氏 心理カウンセラー
防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊入隊。心理幹部として多くのカウンセリングを手がける。大事故や自殺問題への支援をもとに理論を展開。NPO法人メンタルレスキュー協会理事長。『自衛隊メンタル教官が伝える 50代から心を整える技術』(朝日新書)など著書多数(写真:菊池 くらげ、以下同)

 昨年来、不安感が長期間継続しています。不安が大きいと頭の中で「もしこうなったら」「この先こんなことが起こるのでは」と、いろいろなパターンのシミュレーションをし続けますから、エネルギーを消耗するのです。また、不安は不眠を誘発します。夜間に不安を感じると、人間は本能的に「猛獣に襲われるのではないか」という感覚から「眠っている場合ではない」と眠れなくなる。このように、不安によるエネルギーの消耗が続くと、精神的疲労がたまっていくのです。

精神的疲労がたまるとうつ状態になりやすくなるのですか?

 マラソンをしても皆がうつになるわけではないのと同じで、単に疲れたからうつになるわけではありません。コロナ禍の精神的疲労には4つの特徴があり、これらの負荷が高まることでうつリスクを高めています。

コロナ禍の精神疲労の4つの特徴
1 負担感 精神的、肉体的負担。雇用や収入への不安と向き合う負担感
2 無力感 病気に打ち勝つ方法が見つからない。感染拡大に翻弄される
3 自責感 自粛生活に疲れ、人に会いたくなくなることへの自責感。自分が無自覚に感染源になるかもと思う
4 自信の低下 疲労感から課題への対処能力が低下する。孤独感から自分の居場所がないように感じる

 特にコロナ禍は自責感を刺激します。罹患した人は強い自責を感じている人が多く、今後うつになっていく可能性があると思っています。また、ストレスの解消手段であったことが軒並み制限されました。スポーツ、カラオケ、飲み会など、ストレスが入ってきても出す方法がなくなり、ストレスがあふれやすい状況にあるのです。