これからのがん医療やがん患者が抱える課題や生き方などについて議論してきた「がん患者本位のエンゲージメント」を考える会(座長:武藤徹一郎・がん研究会有明病院名誉院長)の最終報告書が先ごろ出版された(詳細は本記事の最終ページを参照)。「考える会」に参加した、医療法人社団鉄祐会理事長の武藤真祐氏に、報告書のポイントと、これからのがん医療に求められるものについて聞いた。
がん患者に対し社会全体としてどんな関与ができるか
まず、「がん患者本位のエンゲージメント」を考える会に参加して、感じたこと、考えたことから伺います。
「考える会」は、2018年5月から、武藤徹一郎・がん研究会有明病院名誉院長を座長として、がん診療に関わる医師・看護師だけでなく、患者団体の代表者、社会学者、ジャーナリストなど、がんに関わる様々な立場の有識者が集まり、これからのがん医療や、がん患者とその家族が抱える課題や生き方、がん情報の活用法など、様々な問題について約1年半にわたり定期的に議論してきました。がん患者やがんサバイバーに対し、社会全体としてどんな関与の仕方ができるか……、が全体を通しての中心テーマでした。
私自身は、がん治療には研修医のときに大学病院で関わりました。現在は在宅医として主に緩和ケア関わっていますが、今のがん治療の最前線の状況については正直疎かったです。
ですから、がん治療の現状や、現場の看護師さんの考え、そして患者団体の代表の方の生の声などを聞けたことは、とても勉強になりました。同時に今、私が在宅で取り組んでいる緩和ケアの意義についても再認識することができました。
加えて、私の経験を踏まえ、別の視点から、「考える会」の中で発言させていただいたことも、良い経験となりました。
別の視点と言いますと?
一つは、治療手段がもうなくなってしまった人たちのケアの重要性です。
「考える会」に参加された医師の先生方は、どちらかと言えばがんを治す最前線におられる方々でしたので、治療手段がなくなり死にゆく人たちのケアに取り組んでおられる方は少数でした。その重要性について、経験を基に私見を述べさせていただき、報告書にも反映することができました。
もう一つは、遠隔診療など、テクノロジーを使った新しい医療の形についてです。この分野に関しても私の活動をご報告させていただき、がん治療や、患者とのコミュニケーションにおけるテクノロジーの可能性と重要性について、がんの専門家の方々の前でお話しすることができたのは、意味があったと考えています。