2022年5月にシンガポールで開催された第10回アジア太平洋高齢者ケア革新アワード(The10th Asia Eldercare Innovation Awards)。その「INNOVATION OF THE YEAR - RESPONSE TO COVID-19(コロナ禍における革新的な対応)」部門において最優秀賞を受賞したのが、日本初の時間外救急プラットフォーム「ファストドクター」だ。2016年の創業から6年目、代表取締役の菊池亮氏はコロナ禍で理解が進んだオンライン診療をさらに推し進め、「医療×DX」でサービスの質をさらに進化させていきたいと話す。

生活者の不安と医療者の負担をなくしたい

 アジア太平洋高齢者ケア革新アワードは、高齢者のQOL向上に向けたビジネスやサービスモデルの卓越性を称えるもの。高齢者ケア業界のオスカーとも言われる権威ある最優秀賞を、世界15カ国、130以上のエントリーを制して受賞したのが「ファストドクター」だ。

 ファストドクターは、夜間や休日などを始め通院が困難な患者に対し、救急病院案内や救急往診、救急オンライン診療などを提供する日本初の時間外救急プラットフォーム。関東や関西の都市部を中心に展開し、登録医師は約1500人、看護師は約300人、医師を送迎するドクターアテンダント200人が現場を担当、本社では事業戦略、医療品質の管理、DXを進める技術開発、患者窓口となるコンタクトセンターなど幅広い分野のスタッフがその活動を支えている。

ファストドクターの代表取締役で医師の菊池亮氏(写真:鈴木 正美、以下注記のないものは同)
ファストドクターの代表取締役で医師の菊池亮氏(写真:鈴木 正美、以下注記のないものは同)
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 「2016年の創業時から、ミッションである“生活者の不安と、医療者の負担をなくす”という信念は変わりません」と、代表取締役で医師の菊池亮氏は話す。

 2013年に整形外科医として勤務していた当時、夜間救急当直を担当することも多かった。日勤と当直合わせて連続36時間労働も珍しくない日々。「夜間救急には救急車で運ばれてくる患者さんも、歩いてくる患者さんもいます。正直、そんなに重症ではない人も多くを占めていました。医療者は疲弊しますし、患者さんも夜間なので満足する検査や治療を受けられない、互いに満足する状況ではないと感じていました」(菊池氏)。

 「また、埼玉県の関連病院で当直をしていたときには、至急、入院治療のために転院の必要がある患者さんがいたにも関わらず19施設に断られ続けて20施設目にやっと決まる、という経験もしました。断られる理由は『忙しいから』。その理由は理解できました。本来、軽症の患者さんはかかりつけ医や休日夜間診療所へ、重症の患者さんは二次・三次救急病院へ、という当たり前の受診行動ができあがっていないのが日本の状況です。これをなんとかしたい、と強く感じたのが、ファストドクター設立の経緯です」(菊池氏)。