ヘルスケア(健康・医療・介護)の分野にICTなどのテクノロジーを活用していこう――。5年前は、こうした動きを指す「デジタルヘルス」「ヘルステック」などといった言葉すら目新しい時代だった。今や、国内でもこれらの言葉は広く浸透し、様々な場面で使われるようになってきた。ヘルスケアとテクノロジーが融合していくことは、もはや疑う余地がない。その前提で、その先に起こすべきイノベーションとは何かを考える時期に突入しているのだ。

 一つは、社会全体のインフラとしてどう実装していくべきなのか。「ソーシャルホスピタル」とも呼ぶべき、社会全体のあらゆる場をヘルスケアの中心地にする世界の実現に向けては、あらゆる業種・業界の知恵と、その連携が不可欠だ。

 例えば、宅配業界のセールスドライバーによる「毎日数百万回のユーザーとの接点」は、ヘルスケアにどう生きてくるのか。全国に5万店舗以上あるコンビニエンスストアの強みは、ヘルスケアにどんな価値を提供できるのか。デザインやエンターテインメント業界などのノウハウは、ユーザーの行動変容をどう促していけるのか…。これまでヘルスケアと直接の接点がなかった業種・業界をも巻き込んだ新たな仕組みの再構築が求められている。

 もう一つは、“健康”という標準解にとどまらない多様性を備えた価値の実現だ。例えば、健康そのものではなく、一歩先にある付加価値、つまり健康という基盤の上で個人や組織が成し遂げたいことは何なのか。あるいは、昨今多くの企業が取り組む「健康経営」を、「幸福経営」という視点で評価軸を再定義することはできないか。実際、ここにきて「幸福度」やそれに関連があるとみられる指標を簡易に計測したり、幸福度と経営指標の関連を検証したりする取り組みも進んできている。

 ヘルスケアの範囲は本来、こうした領域まで広く解釈できるはずだ。あらゆる業種・業界のプレーヤーの知恵と経験を連携させ、多様なヒト・モノ・アイデアを集約する。その上で創造されていく新たなヘルスケアの価値こそが、「Beyond Health」である。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)