住環境の改善は、健康の維持・改善に役立つ――。そんなエビデンスが検証・蓄積されつつある。

 国土交通省が支援し、2014年度から18年度の5年間にわたって日本サステナブル建築協会が実施した「スマートウェルネス住宅等推進調査事業」による調査では、断熱改修などによる住空間の温熱環境の改善が、居住者の健康に与える影響について確認した。

住宅の温熱環境と心電図の異常所見(断熱改修等による居住者の健康への影響例)
健康診断結果で心電図の異常所見が見られるオッズ比。温暖群(居間の床上1m室温が18℃以上)の住宅の居住者を1.0とすると、寒冷群(同18℃未満)の居住者は1.9に上昇する(図:日本サステナブル建築協会「断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)」を基にBeyond Healthが作成)

 「スマートウェルネス住宅」とは、国交省によると「高齢者、障害者、子育て世帯等の多様な世帯が安心して健康に暮らすことができる住環境」のこと。2019年2月に公表された同調査の中間報告によると、「室温が低い家では、コレステロール値が基準範囲を超える人、心電図の異常所見がある人が有意に多い」「断熱改修後に居住者の起床時の最高血圧が有意に低下」といった、住環境と健康との関連についての知見が得られつつあるという。

 個別の住宅だけではなく、地域やコミュニティーにおける交流など、広い意味での「住環境」と健康との関係にも注目が高まる。特に高齢者については、例えば日本老年学的評価研究機構(JAGES機構)などの調査・研究により、住民の助け合い意識や、趣味やスポーツなどの組織への参加など、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)が豊かなほど、健康水準も上がるという関係が明らかになりつつある。

 こうした研究成果に呼応するように、国交省では、2019年度の「スマートウェルネス住宅等推進事業」として、「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」を新設。地域交流拠点(共同リビング、こども食堂、障害者就労の組み合わせなど)の整備、IoT活用による効果的な見守り、地域との連携・交流の工夫などを行う高齢者向け住宅の整備などを支援する。

 このように、住環境と健康向上との関係について数多くの様々なデータが集まることで、行政の住宅政策や福祉政策に影響を与え始めている。

 住宅業界においては、健康についてのエビデンスに基づく住宅市場の拡大を目指す動きが活発になっていきそうだ。

*「スマートウェルネス住宅等推進調査委員会」(委員長:村上周三・東京大学名誉教授/建築環境・省エネルギー機構理事長 副委員長:吉村健清・産業医科大学名誉教授、吉野博・東北大学名誉教授、苅尾七臣・自治医科大学教授)を設置し、調査検証を実施した。委員には建築環境工学分野だけでなく医学分野からも学識者を集めた

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)