がん治療では既に広がる

 2020年代を目前として、プレシジョンメディシンは、がん治療では当たり前になってきている。2010年代には、分子標的薬の登場の使用で一緒に遺伝子変異を調べる「コンパニオン診断」が医療現場に浸透。その後、がん治療に先だって「パネル検査」と呼ばれる数百もの遺伝子を網羅的に調べる仕組みも登場し、2019年には日本で2種類のパネル検査が保険適用となった。一つは、シスメックスが国立がん研究センターと共同開発を進めてきた「OncoGuide NCCオンコパネルシステム」。もう一つは、中外製薬が発売する「FoundationOne CDxがんゲノムプロファイル」である(関連記事)。

 このように、遺伝情報を読み取る検査が当たり前になったのは、遺伝情報を調べる次世代シーケンサーが進化したためだ。2001年にヒトゲノム計画が完了したときには、一人の遺伝情報を全て調べるのに3000億円もかかった。その後、10万円を切るまでに低下。さらに、読み取るのにかかる時間も13年もかかったのが、1日以内で済むようになっていく。こうした進化はさらに進んでいる。

 併せて治療の参考とする遺伝情報をさらに広げようという動きも進む。命の維持に必要なタンパク質をコードしたDNAのエリアである「エクソン」の全体を読み取る「エクソーム検査」や、DNA全体を読み取る「フルゲノム検査」といった詳細な検査を治療に生かそうとする動きだ。人体の持っているタンパク質と関連する遺伝子をまるごと調べる「エキソーム検査」や人体のゲノム全体を調べる「フルゲノム検査」も行われるようになっている。

 プレシジョンメディシンの考え方により、病気はより遺伝情報に基づいて、個別に治療される動きが強まるのは確実だ。がんに限らず、こうした考え方は広がると見られ、これからの医療技術を考える上では欠かせない考え方になると見てよいだろう。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)