IoTやビッグデータ、AIなどを活用して新たな経済価値を生みだし、様々な社会問題を解決する。そんな第4次産業革命(Industry 4.0)の波が、ヘルスケア(健康・医療・介護)分野にも押し寄せている。

 Industry 4.0の代表例として取り上げられるのが、工場内外の機器やサービスを通信ネットワークでつなぎ、実空間のセンシング技術と情報空間のコンピューティング技術を連携させて新たな価値を生みだす取り組みだ。その医療版とも言えるコンセプトをかねて打ち出してきたのが、東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科/ 脳神経外科 教授の村垣善浩氏と同研究所顧問の伊関洋氏らのグループである。

 手掛けているのは、医療機器を相互に接続し、センシング技術やコンピューティング技術を駆使して、治療のアウトプットを最適化することを目指すシステム。すべての手術情報をサーバーに格納し、ビッグデータとして解析。どのような症例に対してもリアルタイムに最適な意思決定を下せるナビゲーションシステムを構築しようとするものだ。

 「SCOT(Smart Cyber OperatingTheat er)」と呼ぶ、この次世代手術システムは、東京女子医大のほか、AMED(日本医療研究開発機構)や信州大学、広島大学、デンソー、日立製作所などによる共同プロジェクトによって開発された。2018年7月末には、信州大学医学部附属病院に、SCOTのスタンダードモデルが完成。最初の症例として脳腫瘍摘出手術を実施した(関連記事:スマート治療室「SCOT」、その完成形が動きだす)

東京女子医科大学に設置した「SCOT」の最上位モデル。2019年4月開催の記者会見で公開した(写真:Beyond Healthが撮影)

 SCOTのスタンダードモデルは、信州大学での臨床研究を経て2019年度の事業化を目指す。海外展開を含めた展開を見据えているという。

 このSCOTの事例だけでなく、IoTやビッグデータ、AIなどを活用した多くの取り組みがヘルスケア領域で相次いでいる。現在は過渡期の状況と言えるが、近い将来、こうした仕組みは徐々に“当たり前”のインフラになっていくはずだ。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)