テクノロジーの進化が後押し

 バーチャル臨床試験では、統括する単一施設で実施できたり、患者に直接対応する人件費なども圧縮できたりするなど、費用対効果が高くなるのも大きい。また、被験者がストレスがかかる慣れない環境で検査を受けるよりも現実に近い実態に即したデータを取りやすくなる。各種の機器を使えば、データ収集も自動化でき、原資料と症例報告書の照合などの作業(source data verification:SDV)の迅速化や削減も図れるので、医薬品開発期間が短くなるというのも利点だ。

 一方で、デメリットとして、被験者・家族との信頼関係構築の難しさ、デジタルのリテラシー、高齢者の参加の難しさ、データのセキュリティー上の懸念などがある。

 このようなバーチャル臨床試験が可能になったのは、テクノロジーの進化が大きい。管理システムやツール、AI(人工知能)などのソフトウエア、ウエアラブルデバイス、パッチなどのIoT(モノのインターネット)デバイスが登場している。

 例えば、アップルは「ResearchKit(リサーチキット)」という臨床研究用アプリを作成するためのオープンソースフレームワークを提供。無料で臨床試験の実施に必要なアプリを作成できるようにしている。こうしたアプリを使えば、医療従事者と対面しなくても同意書を取ったり、心拍数や歩数などの測定データを、アプリを通して取得したりする仕組みを容易に準備できる。バーチャル臨床試験にもそのまま応用可能だ。

 オンライン診療の仕組みで臨床試験を行うことが、日本でも今後出てくる可能性はある。ウェブで100%完結するところまでいかなくとも、最初の説明と同意、組み入れまでは対面で行うようなハイブリッド型も想定されている。


(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)