2000年代後半から広がった概念で、先進国の製品やサービスが新興国に広がる従来のイノベーションの流れとは逆(リバース)に、新興国で最初に開発された革新的な製品やサービスが先進国に広がる動きを表したもの。

 2000年代に、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)最高経営責任者(CEO)を務めたジェフリー・イメルト氏と、GEのチーフイノベーションコンサルタントなどを務めたビジェイ・ガバインダラジャン氏がリバースイノベーションの考え方を広げた。同社では、自社で開発した超音波検査装置がインドなどの新興国では高額で、使い勝手が悪かったことから、インドで小型で低価格の製品を新たにゼロから開発。この製品は、持ち運びができて医療機関の施設が整っていなくても使えるほか、バッテリー駆動であるために外部電源の状況によらず使えるなどの特徴からインドでの拡販に成功した。

 さらに、インド国内にとどまらず、先進国においても救急医療の現場などで引き合いが生まれることになった。これがイメルト氏やガバインダラジャン氏らによってリバースイノベーションの先駆的な成功事例として紹介され、同様な動きが注目されるきっかけになった。

「グローカル」から「リバース」へ

 ガバインダラジャン氏は、2000年代初頭までは、多国籍企業は「グローバル化(globalization)」と「現地化(localization)」を並行させる「グローカリゼーション(glocalization)」を推進してきたという。それは経済的に発展した裕福な先進国で製品を開発し、それを経済的に発展途上の貧困な新興国に広げていく考え方になる。グローカリゼーションの考え方の下では、権力と資源は中央に集まり、開発の拠点などの主要な機能は先進国に集中していた。

 リバースイノベーションはそれとは逆の考え方だ。前述の通り、新興国で開発されたものを先進国に広げるが、権力や資源もより分散した形を取る。開発拠点などの機能も、本社の近くなどに集中させるのではなく、新興国など世界に分散させることになる。

 2000年代より前にグローカリゼーションが機能したのは、購買力を持つ国の中心が欧米と日本で、互いに消費者の背景が似通っており、中央で開発した製品やサービスが容易に世界に広げられたからだった。2000年代に入り、中国やインドなどの新興国が台頭し、購買力を持ち、状況に変化が現れた。消費者の背景が異なり、中央で開発した製品やサービスをそのまま広げるのが困難に。収入の水準が大幅に異なり、先進国で開発されたものが新興国では高額過ぎるなどの問題が存在した。こうした背景から、新興国の状況に合わせた開発を行うことは必須になった。