患者参加の土台が整う

 過去の論文を振り返ると、医療への患者参加が進んだ背景には、医療の効果が臨床研究に基づいてはっきりと示されるようになったこともある。

 1970〜80年代以前にパターナリズムが主流だった背景には根拠となる臨床研究の数が限られ、権威的な医師の経験に頼るしかない事情もあった。日本では大学を中心とした医局制度の中で教授を核に医療の方針が決められてきた。その後、根拠となる臨床研究が次々と行われるようになるにつれて状況に変化が見られた。

 こうした中で、1990年代、臨床研究の結果によって医療の方針を決める「エビデンスに基づく医療」(evidence-based medicine:EBM)が注目されるようになった。エビデンスをまとめたガイドラインも作成され、医師ばかりではなく患者も医療情報を得やすくなり、患者参加の土台が築かれていった。こうしてインフォームド・コンセントやシェアード・ディシジョン・メイキングといった考え方が広く受け入れられるようになる。医学情報では、医療のメリットばかりではなく、デメリットについても伝える。さらに、医師と患者との間の情報共有は価値観や生活など個人的、社会的な情報にも及んだ。

 海外では、シェアード・ディシジョン・メイキングをさらに実のあるものにすべく研究が進む。現状では、医師と患者の間の共同意思決定の範囲が短期的なものにとどまっていたり、エビデンスの問題に終始していたりするなどの課題もあり、より長期的な視点を重視したり、個人的、社会的な問題まで情報共有を進める必要性があるとの指摘がなされている。医師を含めた専門家が患者をサポートして、患者の力になるという考え方がカギになりそうだ。


(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)