人が行動を起こす際に“きっかけ”を与えることで、選択肢を残しながらも人の行動を誘導すること。人の合理的ではない行動を科学的に分析する学問である行動経済学の手法の一つ。

便器の“ハエ”でトイレを清潔に

 例えば、男性用小便器に的となるハエのマークを描いたところ、多くの人が的を目掛けて排尿するようになり尿の飛び散りが減った──というのはナッジを活用した事例だ。便器に的を描くことで、的があれば狙いたくなるという人の性に働きかけ、多くの人を「トイレをきれいに使用する」という行動に誘導することができる。

 ただし、「的を目掛けなければいけません」などと行動を制限するようなことはしない。行動を自由に選択できる余地は残しているのがナッジの特徴だ。

 そもそもナッジは、2017年にノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラ―氏と法学者のキャス・サンスティーン氏が共同で提唱したアプローチ。由来となった英単語「ナッジ(nudge)」は、「肘で軽く突く」や「そっと後押しする」と訳される。

 こうしたナッジの手法は、ヘルスケア事業にも応用されている。厚生労働省が推進しているのが、がん検診受診率を向上させるためのナッジを活用したアプローチだ。同省のホームページには、ナッジ理論を活用した受診率向上施策ハンドブックが2019年4月から公開されている。