黄体期と呼ばれる月経の3~10日前に心身に不快な症状が現れること。イライラや落ち着きのなさ、憂うつといった精神的症状や、頭痛や肩こり、腰痛、下腹部膨満感、便秘、下痢などの身体的症状が代表的である。月経が発来すると減衰または消失するのが特徴。発症原因は不明だが、黄体ホルモンが誘因であると考えられている。

表1●PMS(月経前症候群)の診断基準(表:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2017を基にBeyond Healthが作成)

 PMSを診断するに当たり、日本では米国産科婦人科学会(ACOG)の診断基準を用いる。具体的には、過去3回の連続した月経周期において、それぞれ月経前5日間に精神的または身体的症状のいずれか一つが確認できればPMSと診断できるとされている。対象となる症状は、表1の通り。

働く女性の約7割がPMSを経験

 「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2017」によると、日本では生殖年齢女性の約70~80%が月経前に何らかの随伴症状を経験しているという。日本医療政策機構の「働く女性の健康増進調査2018」では、調査対象者のうち66%がPMSの症状を経験したことがあると回答したが、そのうち63%がPMSに対する処置を「何もしなかった」と答えている。

 さらに、月経随伴症例のうち、月経前に精神的症状が強く現れる場合はPMDD(月経前気分不快障害)と診断される。著しい感情の不安定性がみられるなどの診断基準が定められており(表2)、国内の生殖年齢女性では、1.2%の頻度で起こると報告されている。

表2●PMDD(月経前不快気分障害)の診断基準(表:産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2017を基にBeyond Healthが作成)

パジャマに取り付ける温度計でモニター

 社会生活に影響があるほどのPMSやPMDDは治療の対象となり、認知療法(カウンセリング)や生活指導、薬物療法などを行う。日本医療政策機構の2016年の発表によると、PMSを含む婦人科系疾患を抱えながら働く女性の年間の医療費支出と生産性損失を計算すると、医療費支出が1兆4200億円、生産性損失が4兆9500億円となり、少なくとも6兆3700億円の経済損失があるという。

 こうした実態を受け、行政や企業は健康経営を通じてPMSやPMDDを抱えながらも働きやすい環境を整えることに注力し始めている。そんな中、PMS対策に活用できるヘルスケアサービスも登場してきた。

 コニカミノルタは、オープンイノベーションを推進するBusiness Innovation Center(BIC)の事業の一つとして、PMSなどを抱える女性の生活改善サポートツール「Monicia(モニシア)」を開発した。衣服に取り付ける温度計とスマートフォンアプリをセットにしたモニタリングツールだ。2019年1月からクラウドファンディングの「Readyfor」で資金調達を実施し、2020年2月に専用アプリの提供を開始した(関連記事:月経前サポートで女性活躍を下支え、コニカミノルタの新事業)。

 Moniciaでは、夜寝る前に心と体の調子を「よい」「ふつう」「よくない」などの項目から選び、アプリに入力する。「イライラ」や「浮腫」など気になる症状があれば併せて記録する。専用の温度計をパジャマのズボンに取り付けると、眠っている間の腹部の温度を10分ごとに最大8時間計測できる。起床時にデバイスを取り外してボタンを押せば、温度データがアプリに送信される仕組みだ。

 日々の記録から、低温期と高温期の周期的な変化やイライラや浮腫の強さがグラフとして得られる。自身の心と体の変化の波を可視化することで、時期に合わせたスケジュール調整などがしやすくなり、PMSを抱えながらも女性が働きやすくなることを狙っている。


(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)