文字通り空気中の細菌を殺すことを表現した言葉だが、ウイルスも含めて空間に存在するあらゆる病原微生物を殺す意味として使われている。その効能をうたった製品が2009年の新型インフルエンザ流行時に脚光を浴び、このたび新型コロナウイルス感染が広がる中、あらためて注目されている。

大幸薬品では主力事業の正露丸を超える事業に

 その製品の代表例が、大幸薬品の「クレベリン」。殺菌効果の高い二酸化塩素を液体やゲルに溶かし、濃度を大きく低下させることなく保存する技術を用い、空間中に気化させる商品だ。もともと医療現場で使われていたが、居住空間に存在しているウイルスや細菌を除去する感染管理を目的に一般家庭に販売を拡大。その際、クレベリンとともに打ち出したのが「空間除菌」だった。もともと正露丸で有名な大幸薬品では、クレベリンに基づく感染管理事業が急成長し、2020年3月期には、正露丸を含む主力の医薬品事業の売上高を初めて超える見通しとなった。

 クレベリンのヒットもあり、二酸化塩素を用いた他社製品は増え、2010年には国民生活センターがそうした製品について「どの程度の除菌効果があるのか現状では分からない」「二酸化塩素の放散がほとんどないものがある」「二酸化塩素が食品添加物であることなどを根拠に安全というのは妥当ではない」といった消費者向けの助言を発表する動きにつながった。2011年には、大幸薬品代表取締役社長の柴田高氏が主導して日本二酸化塩素工業会を発足。自主運用基準設定に取り組み、製品の普及と品質向上に自浄効果を働かせた。

 こうした動きを経て、国内で空間除菌や空気殺菌の考え方が定着。二酸化塩素のほかにも、レックが保有するブランド「バルサン」から、塩素化合物の一つ、クロラス酸(HClO2)を使った「エアーバルサンノルウィルバルサン」など、空間除菌をうたう製品は幅を広げている。


紫外線照射による空間除菌装置も

 クレベリンなどは化学的な作用で細菌やウイルスを殺す製品だが、物理的な光の効果で除菌を行う装置も注目されている。

 その一つが、大分市に本社を構えるエネフォレストが発売する「エアロシールド(AEROSHIELD)」。2000年代の前半に紫外線照射装置を開発し、ファン内蔵型の「空気殺菌装置」として特許出願した。ティッシュ箱ほどの大きさで3kgほどの装置を天井に設置。UV-C(短波長)の光を天井付近だけ平行に照射することで人体に影響を与えることなく、室内で起こる空気の自然対流によって上がってくる浮遊菌・ウイルスを不活化する仕組みだ。

 このUV-C照射によって10秒以内に細菌やウイルスを死滅させることが可能だとしている。医療機関を中心に導入を進めており、幼稚園や保育園、学校の給食センター、飲料工場、コールセンター、デパート、駅など着実に導入施設を広げている。新型コロナウイルスの感染拡大の中で、福岡県の中国駐福岡総領事館でも装置を設置した(関連記事)

 海外ではUV-Cを照射する装置を使って、手術室の患者の入院期間が変わるかといった医療的な効果の検証も進んでいる。こうした研究によって効果が確認できれば、普及に一段と弾みがつきそうだ。

 日ごろ、電車内のように、多くの人が密集した環境では感染症の伝搬は容易に起こり得る。またタクシーのような密閉空間でも感染は大きな問題になる。このほか、東京オリンピック・パラリンピックに限らず、多くの人が集まるイベントにおいても感染症の制圧は大きな課題だ(関連記事)。日常の至る所に存在する感染症のリスクにどう対応すべきなのか。空間除菌や空気殺菌などの考え方は効果の検証を経つつ、着実に成長する可能性がある。


(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)