自然の力を借りて治療や健康増進を行うことができる場所や地域のこと。ドイツ発祥の考え方で、独単語「クアオルト(Kurort)」は療養地や健康保養地と訳される。「治療や手当のための滞在」を意味するクア(Kur)と「場所や地域」を意味するオルト(Ort)が組み合わさったできた言葉。

 ドイツでは、国が認めたクアオルト(特定の地域や自治体)に医師や看護師、理学療法士などの専門家が往診・常駐している保養施設が設置されており、医療保険を使って療養することができる。手術後の体力回復や精神疾患患者の療養、健康づくりなど、その目的は多岐に渡る。

 具体的には、(1)温泉や泥、蒸気など土壌に由来するもの、(2)海水や海風、海の泥などの海に由来するもの、(3)太陽光線や清浄な空気など気候に由来するもの、(4)クナイプ療法、のいずれかの要素を活用して療養する。クナイプ療法とは、1800年代にドイツのセバスチャン・クナイプ神父が確立したもので、自然の力を利用して人が本来持っている自然治癒力を高めることを追求した健康法である。(1)~(4)のどの要素を活用するかや、どこのクアオルトに滞在するかは、症状などに応じて選択する。

日本でのクオアルトは…

 日本でも医療保険こそ適応されていないものの、クアオルトの考え方が健康増進に活用され始めている。旅行感覚で自然を楽しみながら、地域住民や来訪者が健康になれる滞在を支援するために、日本全国さまざまな地域が趣向を凝らしている。

 福井県では、福井県気候療法士会など20の団体から成るグループが、「well-beingツーリズム」を企画。海や山に囲まれている福井県の地形を生かした健康プログラムを実施する。既に、越前市の八ツ杉千年の森やあわら市の海岸でプログラムが実施されており、参加者の気分状態が改善するなどの効果が確認できたという(関連記事:ドイツの気候療法を参考に、福井で「well-beingツーリズム」)。

 山形県上山市では、「上山型温泉クアオルト事業」が行われている。市内のかみのやま温泉に運動負荷の異なる約20種類のウォーキングコースが設けられており、心拍数や血圧を測定しながらガイド付きのウォーキングを体験できる。休憩時には湧き水で足を冷やしたり、ウォーキング後は温泉に浸かったり、地元の食材を使った「クアオルト弁当」を提供したりするなど、地域資源を楽しんでもらうことを重視する。さらに、特定保健指導対象者や糖尿病予備軍の人を対象にした宿泊型新保健指導「スマート・ライフ・ステイ」も実施している。

 ドイツのクアオルトをそのまま取り入れるのではなく、日本の風土に合った日本型クアオルトの実現を目指すため、全国の複数の自治体が連携して日本クアオルト協議会を設置した。加盟自治体は、山形上山市、秋田県三種町、新潟県妙高市、石川県珠洲市、兵庫県多可町、島根県大田市、大分県由布市、三重県志摩市、群馬県みなかみ町の6市3町である。協議会ではクアオルトを日本に広めることを目指すとともに、「日本型クアオルト指標」として60項目を定め、品質の担保にも力を入れる。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)