認知機能に何らかの障害が現れているものの、自立した日常生活は送れている状態。放置すれば認知症が進行し、高い確率でアルツハイマー病を発症するとされている。

 米メイヨー・クリニックのRonald Petersen氏らが提唱した概念で、5つの特徴を満たすこととされる。すなわち、(1)本人または家族、介護者による認知機能の低下に関する訴えがある、(2)加齢の影響だけではない記憶障害がある、(3)自立した日常生活は送れている、(4)全般的な認知機能は正常、(5)認知症には至っていない、である。

 日本神経学会の「認知症疾患診療ガイドライン2017」によると、臨床現場ではMCIをスクリーニングするために、「MoCA-J(Montreal Cognitive Assessment-Japanese version)」や「ACE-R(Addenbrooke’s Cognitive Examination-Revised)」が主に使用されるとしている。

 どちらも、視空間認知や遂行機能、記憶力などをスクリーニングする検査である。ただし、ガイドラインには、いずれの評価法もカットオフ値(正常かそうでないかを識別する値)だけで判断するのではなく病前能力や診察時の心身の状態も十分考慮することと明記されている。

 機能テストではなく、生理的に検査する方法も登場し始めている。筑波大学発ベンチャーのMCBIは、MCIのリスクを判定する血液検査「MCIスクリーニング検査」を開発した。7mLの血液を採取し、血液中のたんぱく質を調べることでMCIのリスクを判定する。

 アルツハイマー病は、アミロイドβと呼ばれるたんぱく質が脳内に蓄積することで発症するとされている。MCIスクリーニング検査では、アミロイドβペプチドの毒性を弱めたり排除したりする機能を持つ、アポリポたんぱく質とトランスサイレチン、補体たんぱく質を調べている。

 検査は全国約2300の医療機関で受けられる。MCIのリスクは4段階で判定され、結果に応じて運動や睡眠、食事などの生活習慣改善や専門医の受診を促したりする。

日常生活習慣の特徴と認知機能の変化の相関性を分析

 医学的データと日常生活の相関関係によって、MCIスクリーニングのエビデンス構築を目指す動きもある。パナソニックとパナソニックエイジフリー、国立循環器病研究センターは、MCIの早期発見に関する共同研究を開始すると2020年1月に発表した。医学的エビデンスに基づいて、MCIを早期発見するアルゴリズムを構築することを目指している。

 舞台となるのは、同年2月1日に開業した「エイジフリーハウス吹田健都プレミア」のサービス付き高齢者向け住宅。居室のテレビやトイレにセンサーを設置し、使用状況や操作の仕方をモニタリングし、ドアの開閉や電力使用状況のデータを併せて収集することで生活リズムを把握する。こうしたデータと医療現場での診断結果を照らし合わせて、日常生活習慣の特徴と認知機能の変化の相関性を分析していくという。