WHOによる新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミック宣言から1カ月。爆発的感染の瀬戸際に立たされている日本では、富士フイルムホールディングス傘下の富士フイルム富山化学が開発した抗インフルエンザウイルス薬ファビピラビルの転用に期待が集まっている。商品名はアビガン。自治体レベルで新型インフルエンザ用の備蓄が進められてきたが、3月末に、新型コロナの患者を対象にした臨床試験が始まった。

 ファビピラビルは、2014年に条件付きで承認された特殊な経緯を持つ。オセルタミビル(商品名タミフル)やザナミビル(リレンザ)などの一般的な抗インフルエンザウイルス薬が無効、あるいは効果が不十分な新型および再興型のインフルエンザが発生し、国が必要だと判断した場合にのみ、インフルエンザ患者への投与が検討されるのだ。投与を検討するような新型インフルエンザの流行はまだないが、2016年にギニアでエボラ出血熱の感染拡大が見られた際などに使われ、治療効果があったとされている。

 インフルエンザウイルスが自身のRNA(リボ核酸)遺伝子を増幅する際に働く酵素(RNA依存性RNAポリメラーゼ)を阻害することで効き目を発揮する(図1)。遺伝子のコピーを作れなくなったウイルスは増殖できなくなるため感染を連鎖させることができず、肺などの細胞への傷害や炎症反応が治まっていく。コロナウイルスやエボラ出血熱を起こすエボラウイルスもRNA遺伝子を持ち、やはりRNA依存性RNAポリメラーゼを使って遺伝子を増幅している。

図1●ファビピラビルの作用メカニズム(出所:文献8)