「コロナ差別」が日本のマスメディアでも報じられるようになっている。欧米各国では、新型コロナウイルスに感染しているかもしれないということで、アジア系の住民や旅行客が暴行や差別を受けたという事例が多数報告されていた。こうした差別が欧米だけにとどまらず、国内でも問題となっている1)

日本でも増える差別事例

 欧米においては人種や出身国という要素も関係しているため、単純に感染者への差別であるのかが判断しづらいところもあるが、日本では人種や出身国という要素が希薄である分、感染者を対象とした差別が存在する場合にはその理由が感染であることが明確であり、かえって根深いものになっているようにも思える。報じられたコロナ差別の事例とは、たとえば——

(1)4月17日、時事通信社は、死亡した感染者の遺族が「お前も感染者か?」と聞かれたり、職場で避けられたりして、強い差別を感じたという事例があることを報じた2)

(2)4月19日、NHKの報道によると、ある県の小中学校で、感染が拡大した地域を訪れたかどうか、アンケートが行われ、仕事で訪れた者が家族にいると答えた世帯の子どもが、自宅で待機するよう学校から求められたことが明らかになった3)

(3)4月20日、三重県の鈴木英敬知事は、同県内で感染が確認された人の家に石が投げ込まれてガラスが割られたり、その壁に落書きをされたりしたと明らかにした4)

(4)4月20日、ある大学の学生が3月に欧州を旅行し、感染に気づかず会食などに参加したところ、クラスターが発生し、その大学には、抗議や脅迫の電話やメールが数百件届いていたことが報じられた5)

(5)4月22日、日本看護協会は、医療従事者に対する入店拒否や乗車拒否、その子どもが保育園に登園することを自粛するよう求められたこと、子どもへのいじめ、などがあることを報告した6)

 以上はいうまでもなく、マスメディアで報じられた事例のうち、さらに一部にすぎない。報じられたものすべてを集めても、おそらくは氷山の一角であり、根深いコロナ差別が広がっていることは想像に難くない。

 どのような人たちがコロナ差別を受けているのだろうか? 第一に、感染者や濃厚接触者、その家族である。前述の事例では(1)や(3)が該当する。第二に、規範を逸脱して行動してしまった感染者や濃厚接触者、関係者などである。(4)が該当する。第三に、医療者やエッセンシャルワーカー(社会を維持するために自宅外で勤務する労働者)、「夜の街」での接客業など人と接触することが回避できない職種の人たちである。前述の事例では(2)や(5)が該当する。医療従事者についていえば、院内感染や施設内感染を起こした医療機関や施設に勤める人たちやその家族などは、さらに陰湿な差別を受けているかもしれない。

 いずれについても、その人たち、つまり差別を受けている方々を責めても、彼らのトラウマ(心の傷)やスティグマ(負のレッテル)がより深くなるだけで、新型コロナウイルス感染症のアウトブレイクという問題を解決することにはまったく役立たない。むしろ、差別を受けた人たちや、その様子を見た人たちがこれ以上の差別を恐れ、調査への協力を拒んだり、感染拡大につながる出来事を隠蔽したり、社会を維持する上で重要な仕事から離職したりすることを促してしまう可能性がある。