ワクチン開発とともに、既存薬転用の模索が急ピッチで続くなか、初の治療薬としてレムデシビル(商品名ベクルリー)が承認された。国内では抗インフルエンザ薬のファビピラビル(アビガン)への期待が高まっていたが、米食品医薬品局(FDA)が5月1日にレムデシビルの緊急時使用を許可したことで、日本でも医薬品医療機器等法(薬機法)の特例承認制度が適用され、例外的な早さで承認に至った。

 特例承認制度とは、薬機法の第14条の3に定められている承認の仕組みのこと。(1)国民の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある疾病のまん延防止のためなどに緊急使用が必要、(2)外国において認められた医薬品(医薬品の品質、有効性及び安全性を確保する上で日本と同等の水準)──といった条件を満たす医薬品について、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を踏まえ、医薬品を承認できると定められている。

 レムデシビルは、米ギリアド・サイエンシズ社(以下、ギリアド)がエボラ出血熱などをターゲットに開発した薬。体内で代謝されるとGS-441524という化合物になり、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp:ウイルス増殖のために働く酵素)の特定領域に結合する。GS-441524が結合したRdRpは酵素としての機能を発揮できなくなるため、ウイルス増殖が阻害されるということらしい。2018〜2019年に西アフリカでエボラ出血熱が流行した際に臨床試験として患者に投与されたが、その後の検証で、他の2剤との有意差が得られず1)、未発売のまま現在に至っていた。つまり、一旦お蔵入りになったものが、今回、新型コロナの薬として日の目を見ることになったわけだ。

 同社の5月2日付プレスリリース2)によると、今回、投与が許可されるのは、(1)SARS-CoV-2感染が疑われる患者、(2)検査で感染が確定し、重度のCOVID-19症状を呈する患者──に限定される。重症COVID-19とは、室内気下の酸素飽和度(SpO2)が94%以下か、酸素補給、人工呼吸器、体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする症例を指す。レムデシビルは静脈内に投与する薬であることから、入院中の小児〜成人で、静注薬剤の使用が臨床上適切とされる場合に用いる点にも言及している。

 さらに同リリースには、「最適な投与期間については、現在実施中の臨床試験で検討中」としたうえで、「侵襲的人工呼吸器、および/または体外式膜型人工肺(ECMO)を必要とする患者には10日間投与、そのような処置を必要としない患者には5日間投与を推奨しています。5日間投与で臨床状態の改善が得られない場合は、最大で5日間延長(総投与期間:10日間)してもよいこととされています」と記されている。