細胞の中のDNA(デオキシリボ核酸)から塩基配列を写し取ってタンパク質を作る役割を持つメッセンジャーRNA(mRNA:メッセンジャー・リボ核酸)を、標的細胞に届けて病気を根本的に治す医薬品を指す。

遺伝子治療と異なり細胞核に入れないため安全性に優れる

 mRNAを薬として利用する試みは1990年代から報告されるようになった。生物の特徴や遺伝情報を決める物質であるDNAやRNAから生体の機能を担うタンパク質が作られているので、それらの核酸を医薬品として投与することで人工的にタンパク質を作り出すという考え方が生まれていた。

 細胞の中では、DNAからいったんmRNAに転写されて、ここからタンパク質が作られている。DNAから直接タンパク質を作るのではなく、mRNAを経由することで、mRNAの編集を可能として、作り出すタンパク質に多様性を生み出せるようになっている。2010年代から、このプロセスを人工的にコントロールする技術が開発されて、mRNAを医薬品として活用する道が一気に開かれるようになった。mRNA医薬は、DNAを使った遺伝子治療のように核に入れる必要がないため、ゲノムを変異させるリスクがなく安全性に優れるとされる。

 ただしmRNAは、体内に投与してもすぐ分解されたり、免疫によって排除されたりする。そのため薬剤送達のためのドラッグデリバリーシステム(DDS:薬剤送達システム)の技術が併せて開発されており、脂質ナノ粒子(LNP)やポリマー粒子が用いられるようになっている。