ホウ素化合物を病巣に送達して中性子線を照射することで、ホウ素との核反応でがん細胞を破壊する治療法のこと。英語表記のboron neutron capture therapyの頭文字を取ってBNCTとも呼ばれる。

 5月20日にBNCT用のホウ素化合物(商品名ステボロニン、製造販売元ステラファーマ)が、6月1日に治療システム(住友重機械工業)がそれぞれ保険適用となった。光や超音波、中性子線など安全な物理エネルギーを患部に照射し、そこで薬剤を活性化させるがんの根治療法は、手術、抗がん剤、放射線、免疫療法に次ぐ「第5のがん治療法」として注目されている(関連記事)

がん細胞の性質を利用

 ホウ素は、植物の生育に必須な微量元素として知られる。ホウ素に対して放射線の一種である熱中性子線を照射すると、核反応を起こしてヘリウム原子であるα粒子とリチウム原子核であるリチウム反跳核を放出する性質がある。BNCTでは、こうしたホウ素の特徴を生かして、核反応で出てくるα粒子とリチウム反跳核によりがんの細胞を殺す治療になる。α粒子とリチウム反跳核は10μm(μは100万分の1)と細胞1個分しか飛距離がないため、正常細胞への影響がほとんどないのが特徴。

ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の原理 ホウ素と熱中性子が核反応を起こし、細胞傷害性の高いα粒子とリチウム反跳核を産生する。これらの粒子ががん細胞に致命的な傷害を与える(出所:2020年1月23日付 東京工業大学プレスリリース)

  治療に使われるホウ素は、アミノ酸の一種であるフェニルアラニンとホウ素を結合させた「BPA(ボロノフェニルアラニン)」という化合物を用いる。BPAはアミノ酸を含むため、アミノ酸を細胞内に取り込む「LAT1」と呼ばれるタンパク質(アミノ酸トランスポーター)によって細胞に取り込まれやすい性質を持っている。このLAT1は正常細胞の表面にはほとんどないが、がん細胞の表面には過剰に存在している。がん細胞は増殖のためにアミノ酸を多く必要とするためであると考えられる。BPAはLAT1に取り込まれることで、がん細胞に集まる。こうした薬物動態を利用し、がん細胞だけを狙い撃ちする。

 最近、東京工業大学の研究グループが、BNCT用のホウ素化合物に、液体のりの主成分であるポリビニルアルコール(PVA)という高分子を加えるだけでその治療効果が劇的に高まることを発見、マウスの皮下腫瘍をほぼ消失させたと報告し、話題になった(関連記事)