スマートフォンアプリやテレビ電話などを使って、遠隔で行うリハビリテーションのこと。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、新しい生活様式への適応が求められている中、これまで施設に通って行っていたリハビリテーションを自宅で行うためのサービスが登場し始めている(関連記事:自宅で運動やリハビリ、人事や産業医は遠隔で健康把握)。

 オーダーメイド型リハビリ施設「AViC THE PHYSIO STUDIO(エービック ザ・フィジオ・スタジオ)」を運営する豊通オールライフは、同施設の利用者を対象に、テレビ電話や電話を利用したオンラインリハビリ相談サービスの提供を2020年6月15日に開始した。自宅にいながら効果的なリハビリテーションを受けてもらうことを狙う。

 オンラインリハビリ相談サービスでは、リハサクが手掛けるクラウド型Webサービスを活用し、500種類の運動メニューの中から利用者の状況を加味したオーダーメイドのメニューを作成する。利用者はスマートフォンやタブレット端末で運動メニューの動画を確認しながら、自宅でリハビリテーションをすることができる。

オンラインリハビリ相談サービスの概要(出所:豊通オールライフのプレスリリース)

 テレビ電話や電話をしながら、セラピストがリアルタイムで助言することもできるため、自宅でも施設と遜色ないリハビリテーションを行える可能性がある。豊通オールライフがオンラインリハビリのサービスを開始したのは、「遠隔地から施設に通っているため、継続して店舗に通うのが難しい」「自宅でも質の高いリハビリを継続したい」という声が届いたからだという。

 筑波大学発のスタートアップ企業であるExultは、高齢者を対象にしたオンラインリハビリのサービスを2020年4月に開始した。同社はこれまで、生活習慣病の予防に特化した店舗型のサービスを展開してきた。今回、オンラインリハビリの提供を開始したのは、COVID-19の感染拡大を受けて、外出を自粛する高齢者の筋力が低下してQOLが下がることを課題視したからだ。

 理学療法士などがテレビ電話や電話で相談を受け付けており、希望者には運動指導を行うこともできる。具体的には、一人ひとりの体力や悩みに合わせて組み立てた運動メニューや生活習慣プログラムをスマートフォンやタブレット端末を使って指導する。「立つのが難しい」「歩くとふらふらする」「肩や腰が痛い」といった悩みに対応しているという。

脳卒中後のリハビリもオンラインでサポート

 スタートアップのエクサウィザーズと北原病院グループは、オンライン遠隔リハビリサービスを共同開発し、北原リハビリテーション病院に試験導入したと2020年6月25日に発表した。脳卒中後の片麻痺が残る患者を対象にしており、病院や通所施設に通う頻度を減らして感染症対策を講じる狙いだ。

 さらに、脳卒中を発症した後に保険内で受けられるリハビリテーションには、日数や時間に制限があるため「リハビリテーションの方法を忘れてしまう」「モチベーションが維持できない」といった課題がある。オンライン遠隔リハビリサービスを使い、自宅での自主トレーニングをセラピストが遠隔でサポートすることで、こうした課題を解決したいとしている(関連記事:オンライン遠隔リハビリ、エクサウィザーズと北原病院)。

 まずは、北原リハビリテーション病院での入院中に自主トレーニングに取り組みたい人や、退院後もリハビリトレーニングに取り組みたい人を対象にする。利用者が運動の様子をアプリで撮影し、セラピストがその動画を確認してフィードバックをアプリ上で送ることで、自宅に居ながら質の高いリハビリ指導を実現できるという。

 AIを用いた骨格抽出技術を用いており、患者の手の動きを自動で認識し、画面に触れずジェスチャーでアプリを操作することが可能だ。今後は、患者の運動の様子をAIで解析したり、患者へのアドバイス内容を学習したAIがセラピストに運動指導のアドバイスを提示したりする機能も搭載予定だという。将来的には、脳卒中に見られる失語症などの高次脳機能障害のリハビリの追加や、他の疾患やフレイル対策に対応したサービス展開を検討している。

90歳代でもオンライン運動指導が可能

 デイサービス向けクラウド機能訓練ソフト「リハプラン」を運営するRehab for JAPANは、オンライン介護の実現を目指す「リハブオンライン(RehabOnline)プロジェクト」を2020年5月から行っている。これは、リハビリテーションや運動、スタッフとのコミュニケーションなど、これまでデイサービスで行ってきたサービスをオンラインで提供できるようにするというプロジェクトである。

 第1弾として、デイサービス事業者のカルチャー型デイサービスセンターサロン de Day(千葉県佐倉市)を利用している80~90歳代5人の対象者に参加してもらい、同年5月23日~6月22日までの期間に実証実験を行った。対象者とその家族にタブレット端末を貸与し、体調などの状態確認とオンラインによる運動指導ができるかを検証した。

タブレット端末の説明を受けている様子(出所:Rehab for JAPANのプレスリリース)

 その結果、対象者全員とオンラインでのスムーズなコミュニケーションが可能だった。同居する家族からは、「母がタブレット操作をできると思ってもみなかったし、1時間も体操ができるなんて思わなかった」という声まで届いたという。

 脳梗塞リハビリセンターでは、COVID-19の感染拡大を受けて理学療法士によるオンラインリハビリ無料相談窓口を設置した。リハビリ施設やデイサービスなどに行きたいが、外出に不安がある人や、自宅でできるリハビリテーションについて相談したい人に向けている。

 オンラインリハビリのサービスが続々と登場し始めているのは、COVID-19の影響で外出をためらう人が増えたことが大きな理由である。これまで施設に通って行っていたリハビリテーションを自宅で受けられるようにしたり、活動量の低下を補ったりすることが目的だ。

 ただし、今後、こうしたサービスが浸透していけば享受できる利点はそれだけではなさそうだ。これまで受けていたリハビリテーションを自宅で受けられるだけでなく、住んでいる地域によらずに質の高いリハビリテーションサービスが受けられることにもつながるかもしれない。新しい生活様式は思わぬ功を奏すのか、見届けたい。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)