人々が健康で快適に働くための条件に着目して、オフィス空間の環境性能を認証する評価システム。「WELL Building Standard」として2014年に米国のDELOS社が考案した。独立性を高めるため、公益企業IWBI(International WELL Building Institute)が運営し、第三者評価機関としてGBCI(Green Building Certification Inc.)がその認証を行っている。2020年8月時点で、世界63カ国で4419の建築物等が認証されている。日本国内でも認証を受ける建築物が増えている(関連記事)

 かねて持続可能な開発目標(SDGs)や環境、社会、企業統治(ESG)を重要視する考え方が強まっており、オフィスにおいても働き方を改善しようという動きの中で、建築物を健康面から評価する考え方は注目度を高めていた。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、室内空間の衛生面を含めた健康への配慮、ひいてはこうした認証制度には一層関心が高まる可能性がある。

空気や水をはじめ11の分野で110の項目を評価

 制度を考案したDELOS社は、2009年に建築物や室内空間、街区と健康との関係に着目して、米国において住宅やオフィス、ホテルなどの空間の健康面でのコンサルティング事業を開始した新興企業。建築物の認証制度としては環境性能を評価する米国のLEED、英国のBREEAM、日本のCASBEEといった制度も既にあったが、それらと比べて、人の身体的、精神的、社会的に良好な状態(well-being)に焦点を当てて新たな認証制度として打ち出してきたのが特徴となっている。

 WELL認証はバージョンアップが行われており、2018年からはWELL認証第2版の認証制度が運用されている。建築や室内空間などが健康とウェルネスを促す条件を満たすかどうかについての観点が拡大されて、空気や水、光、室温、音のほか、食事の環境や自然へのアクセスなどの11の分野にわたって110の項目を評価する仕組みになっている。

 こうした評価項目は公開されており、それぞれの評価項目に関わる課題、それに対する解決策、対策の効果が示されている。例えば、労働生産性や労働者の集中力、健康リスクの低減にどう空間の改善がつながってくるのかが提示される。第2版においては、評価項目の設定のために126の科学的研究や公的資料が引用文献として採用され、エビデンスに基づいた評価となる。

 評価項目が、建築物の物理的な性能にとらわれずに設定されているのはwell-beingに焦点を当てているからこその特徴だ。例えば、食事を取れる環境という分野では、単に食事を取るのに適した環境があるというだけではなく、食事が販売されている場合には果物や野菜を選択できるのか、健康的な食品を選べるかなど、健康の問題にも踏み込んでいる(表1)。

表1●WELL認証第2版の評価項目の一部 その他、運動、温熱快適性、音響、材料、心、コミュニティ、革新といった評価項目がある。(出所:グリーンビルディングジャパンのウェブサイト)

 他にも運動という分野が設けられ、体を動かす環境があるのかという評価項目があるほか、心やコミュニティといった分野ではストレスを与えない工夫があるか、ライフワークバランスを保った働き方を実現しているかなどが問われる。こうした評価項目ごとに点数が設定されており、それらの合計によってプラチナ、ゴールド、シルバーの認証が付与される。

 冒頭の通り、世界各国での認証プロジェクトを進めており、多くは米国と英国のプロジェクトになっているが、日本でも42の認証プロジェクトが進行している。我が国で最初に認証を受けたのは大林組技術研究所で、このほかイトーキが2018年に移転開設した新本社「ITOKI TOKYO XORK」に対して認証を受ける(関連記事)など認証件数はさらに増えていくとみられる。

 オフィスや住居、店舗などをどう使えば健康に良い生活が実現できるのか様々な研究が行われており、その成果が社会実装できるようになっている。漫然と建築物を使うのではなく、エビデンスに基づいた環境づくり、利用の在り方が求められている。WELL認証のような仕組みは日常生活にいかにヘルスケアの発想を取り入れていくかを考える好機であるといえるのかもしれない。


(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)