ゲームの仕組みを、ゲームとは本来関係のない領域に適用することで、平凡な活動の中に楽しさや利益を感じられるようにして、人々を有益な活動へと巻き込んでいこうとする考え方。もともとはビジネスやマーケティングの分野で始まったが、健康・医療領域にも広がりを見せており、重要性を増している。

2010年代から研究が本格化

 健康・医療分野の論文でゲーミフィケーション(gamification)の単語が初めて登場したのは2012年のカナダの研究で、スマートフォンのアプリを使った1型糖尿病の管理の仕組みを検証するものだった。血糖値を採血で測定してインスリン注射などを続け、正常範囲に収めるのは本来であれば心身の負担が大きい治療になる。そこにゲームの発想を入れて、血糖値が正常に保たれていると、アプリの中で利用可能な報酬を得られる仕組みにした。結果として、血糖値の有意な改善につながった。

 かつてゲームは子どもの心身の成長にとって有害である可能性が指摘されることもあった。そうした発想を転換して、むしろ健康の向上に使う動きになった背景には、2000年代のスマートフォンの登場、同時期に販売されたニンテンドーWiiが健康に利用できるよう訴えたことなどが関係している。その後の科学論文においてモバイルヘルスにこうしたゲーム機を使い、ゲームの仕組みを健康の促進につなげる研究が2010年代から次々と報告されるようになった。

 2017年にモロッコの研究グループがまとめた総説によれば、ゲーミフィケーションの考え方が本格的に採用されている領域として、前述の糖尿病のような慢性期疾患の管理のほか、運動の促進、栄養、メンタルヘルス、衛生管理などがある。米国やポルトガル、カナダ、英国、オランダ、フィンランド、イタリアなどで研究が進んでいる。その活用は、さらにリハビリテーションや神経疾患、医学教育などの分野に広がっている。