変動性、不確実性、複雑性、曖昧性を意味する4つの英単語「volatility」「uncertainty」「complex」「ambiguous」から作られた頭字語。もともと世界情勢は大きな変化が起きていると指摘され、ビジネスの在り方や価値観などが大きく変化していた。こうした状況は「VUCA時代」と呼ばれることがあった。新型コロナウイルス感染症の発生により混沌とした状況はさらに顕著となり、あらためてVUCAという言葉が注目されている。

デジタル活用に注目

 VUCAはもともと2001年9月11日に発生した米国同時多発テロ、911テロの後の変化の激しい状態を示す言葉として、米軍で使われた言葉だった。それがその後の米国内での経済危機による雇用不安の起きる状態を表す言葉としても使われるようになった。

 直近では、新型コロナウイルス感染症の収束が見えづらい中で変動性の大きな状態になっている。同時に先行きが見えづらい不確実性、解決先を見いだしづらい複雑性、問題の所在が見えづらい曖昧性が問題になっている。現在の新型コロナウイルス感染症の発生で生じている状況は、これまで社会的な問題に使われてきた用語であるVUCAの条件にまさしく当てはまる状況になっている。

 新型コロナウイルス感染症のVUCAの時代において注目されているのがデジタル技術の活用だ。英国サンフォード大学のゴードン・フレッチャー氏らはVUCAの視点を通してパンデミックとロックダウンの状況を見たときに、「いかにデジタル的に未熟な組織が脆弱であったか」が浮き彫りにされると指摘している。

 同氏はVUCAについては「予測不可能な外部環境を認識するリトマス試験」と表現する。その上で、VUCAを無視すべきではないとして、VUCA時代の組織の置かれた特徴として3点を挙げている。すなわち、「組織はデジタル成熟度を向上させる必要がある」「デジタル成熟度が低い組織は脆弱である」「デジタル成熟度が高い組織は柔軟度が高い」である。

 パンデミックの期間においては、デジタル成熟度の低いビジネスでパニックの状態による買い占めといった問題が露呈したと指摘。ロックダウンでは、自宅で安全を確保しながら経済的に活動的に仕事をできる在宅勤務での特権や、いわゆるエッセンシャルワーカーの人たちがさらされるリスクなどの新しい問題が見いだされたとした。

 同氏は、組織へのデジタル機器の導入を進めたから終わりではなく、より複雑なデジタル成熟度を高める活動を進める必要があると強調する。

 ヘルスケア領域において、オンライン診療の活用がなし崩し的に解禁されようとしているのは、デジタル成熟度の低さを今回のVUCAの状況が直撃したものととらえることができるかもしれない。今後はますます遠隔医療が重要度を増してくると見られ、そこではバーチャルリアリティー、拡張現実、人工知能、IoT(モノのインターネット)の活用がさらに模索されると見られる。

 新型コロナウイルス感染症の問題を回避していく上で、デジタル技術の活用が重要度を増しているのは間違いない。それと併せて、こうしたデジタル技術を使いこなす、組織や業界のデジタル成熟度の向上も重要だと言えるのだろう。そのためにはハードウエアやソフトウエアを使うことに加えて、さまざまプロセスやコミュニケーションの在り方も従来のままで良いかが問われる。在宅勤務や一極集中の解消などが進んでいるが、業務の在り方、働き方などの再点検が求められる。