緑視率とは、人の視界に占める観葉植物の割合のこと。その空間に植物がどれだけ存在しているかを示す指標として使われている。

 豊橋科学技術大学 名誉教授の松本博氏らは、オフィス空間に観葉植物を設置することで従業員のストレスを軽減できるという研究成果を明らかにした。これを受けて、これまで都市景観の調査や街づくりに用いられてきた緑視率が、オフィス空間の設計にも活用され始めている。

 松本氏らの研究では、愛知県内のオフィス勤務する男女30人を対象にし、観葉植物を設置した場合としなかった場合の比較を行った。具体的には、室内環境の評価や知的生産性、経済評価などを行うアンケートを実施。その結果、観葉植物を設置したオフィス環境の方が、社員の睡眠時間の短さによる体調不良やモチベーションの低下を緩和していることが分かったという。

 さらに、生理的な反応を観測するため、ストレスを受けると分泌が高まるとされる唾液アミラーゼ活性値の測定も行った。従業員30人の唾液アミラーゼ活性値の平均は、植物を設置しなかった場合で2.76であるのに対し、植物を設置した場合は2.61だった。この結果から、植物を設置することが生理的なストレスを軽減する効果があることが確認できたというわけだ。

自然環境に近づけたワークスペースを

 パソナ・パナソニック ビジネスサービスは、同社が手掛ける健康経営ソリューション「COMORE BIZ」に緑視率の視点を取り入れている。COMORE BIZは、職場環境を自然環境に近づける「バイオフィリックデザイン」を実現することで、従業員のストレス軽減を目指すソリューションである。

 具体的には、独自の植物データベースを用いて選定した植物を緑視率10~15%の割合で設置することでストレス軽減を図っている。2020年7月には、COMORE BIZにパナソニックのオーディオブランド「テクニクス」の音響システムを採用し、緑と音による快適な空間ソリューションの提供を開始した。

 NPO法人Nature Serviceが運営する「信濃町ノマドワークセンター」は、壁一面を窓ガラスにすることで、施設内のどこにいても周囲の森林が見えるように設計されている。一定の緑視率を目指すのではなく周囲の環境を利用した作りだが、Nature Serviceの実証実験によると、森林環境下でのリモートワークが生産性を高める可能性があると示唆されたという(関連記事:コロナ禍であらためて注目、「森林で働く」健康経営)。

 さらに、Beyond Healthが2030年に実現を目指す「空間」をイメージして描いた「Beyond Office(未来のオフィス)」においても、緑視率の視点を盛り込んでいる。未来像を投影したイラストには、オフィス内に「森林ワークスペース」や「屋上庭園」を描いた。人間は本能的に自然とのつながりを求めることから、意図的に植物を設置することで幸福感を醸成することを狙っている。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)