生体が活動することによって生じる代謝物を網羅的に解析すること。メタボローム解析ともいう。

 生体内ではたんぱく質の働きによって日々代謝物が生成され、その種類や濃度は日々の食事や疾患によって変化する。そのため、代謝物を網羅的に解析することで刻一刻と変化する体の状態を観察できる可能性がある。

疾病のバイオマーカー探索に活用

 その一つが、メタボロミクスを使って疾患のバイオマーカーを探索し、新しい診断法を確立しようとする動きである。

 例えば、ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ(HMT)と川村総合診療院(東京都港区) 院長の川村則行氏らは、メタボロミクスを活用して、うつ病患者の血液中には「リン酸エタノールアミン(PEA)」という物質が低下していることを発見した。他の精神疾患との鑑別も可能であるため、血液中のPEAをうつ病診断のバイオマーカーとして用いることができる可能性があるという(関連記事:血液検査で「うつ病」を診断する時代へ)。

 HMTでは、特定の疾患の可能性やリスクを示すための指標ではなく、心身ともに健やかな状態である健康の度合いを示す指標づくりを目指している。メタボロミクスを活用することで、心身の変化を数値の異変としていち早く捉えられると考えた。うつ病を始めとする精神・神経疾患に着目したのは、患者が多く社会的損失が大きい一方で、アプローチが少ないからだという(関連記事:市内唯一の上場企業、まずは「うつ病」で成果)。

 さらに、メタボロミクスは大腸がんの診断にも活用が期待されている。大阪大学大学院 医学系研究科 がんゲノム情報学教室 教授の谷内田真一氏らは、メタボロミクスとメタゲノム解析を用いて、超早期の大腸がんに関わる腸内細菌を突き止めた。腸内細菌や、その遺伝子配列と代謝物質などを組み合わせて解析すれば、8割近い感度で初期の粘膜内がんの診断が可能になりそうだと示唆されている(関連記事:便中の「腸内細菌」から超早期の大腸がん診断が可能に)。

 このほか、大阪大学と島津製作所は、2019年12月に「大阪大学・島津分析イノベーション協働研究所」を開所した。ここでは、メタボロミクスを核として、疾病のリスク予測や機能性食品の評価・改良につながる基盤技術や製品開発を行う。まずは、疾病マーカーを用いたリスク判定システムなどの製品開発を目指したいとする(関連記事:「メタボロミクス」を核に、阪大と島津製作所が協働研究所を開所)。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)