曲げ伸ばしできる素材を用いて、曲面に取り付けることのできるセンサー。皮膚などに直接沿わせることが可能なセンサーも登場し始め、医療やヘルスケア領域への応用が期待されている。

 例えば、東京大学 大学院工学系研究科長 教授の染谷隆夫氏らのグループは、かねてシート型のフレキシブルデバイスの開発を進めてきた。2020年1月には、ジャパンディスプレイと共同で開発した、指紋・静脈・脈拍を同時に計測できるシート型イメージセンサーを発表した(関連記事:1枚のシート型センサーで指紋・静脈・脈拍を同時計測)。

 センサーは薄型で曲がるため、ウエアラブル機器への組み込みが容易だという。生体を認証するための指紋や静脈に加えて、バイタルサインの脈拍を同時計測できるという特徴を生かして、患者の取り違え防止用の機器開発などにつなげたいとする。

 さらに染谷氏らは、皮膚に直接貼り付けるセンサーの開発も進めている。体に身に着けるのではなく貼り付けることで、日常生活の邪魔をすることなく体の状態をセンシングすることを目指す。

 2020年7月には、大日本印刷と共同開発している皮膚に貼り付けるスキンディスプレーのフルカラー化に成功したと発表。大日本印刷が独自開発した“DNP方式”と呼ぶ電極配線を採用し、皮膚に貼り付けても破損することのない伸縮性のある電子回路基板を実現したのだ。この配線方式を採用すれば、全方向に伸縮が可能で、変形させても電気抵抗が変化しないという(関連記事:皮膚に貼るセンサーへの応用も、東大と大日本印刷)。

 研究チームは、こうした皮膚に貼り付けるスキンディスプレーの技術を活用しながら、LEDの代わりにセンサーを搭載することで、皮膚に貼り付けるセンサーの開発を進めたいとしている。搭載するセンサー次第で、体の動きや体調などのさまざまなデータが取得できると期待される。

 まずは、体勢の検知や脈拍の測定をするセンサーの搭載を目指している。例えば、体勢を検知するセンサーを搭載し、赤ちゃんの皮膚に貼り付けて、起きているか寝ているかを確認する──といった使い方を想定しているという。

文字入力ができる布製のデバイスも

 このほか、東京大学の工学部および教養学部の学部生などから成るプロジェクトチームWearbo(ウエアボー)は、ウエアラブル文字入力デバイス「Wearbo」を開発している。Wearboは、印刷された四角のパターンを指でなぞると文字入力ができる布製のデバイスである。ここにも、染谷氏が研究する生体調和エレクトロニクスの技術が使われており、タッチセンサー素子を埋め込むことで文字入力が可能になっている(関連記事:声を取り戻すデバイスや布製ウエアラブル、東大発スタートアップ最前線)。

 どこに行くにも身に着ける服に直接インターフェースを実装することで、ガジェットを手に持ったり身に着けたりする煩わしさを解消する狙いがあるという。現在は、太もも部分をタッチすれば文字入力が可能なズボンに貼り付けるタイプの開発を進めている。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)