プロテオミクスとは、たんぱく質(Protein)を網羅的に解析すること。プロテオーム解析ともいう。

 人の体には数十兆個の細胞があり、その主要な成分がたんぱく質である。各臓器や組織、生体機能を維持するために必要な酵素やホルモンも、たんぱく質でできている。

 体内に存在するたんぱく質の種類や状態は、生活習慣やストレスなどの環境要因によって常に変化する。そこで、プロテオミクスを活用して、体内に発現するたんぱく質の種類や量、状態を調べ、その人の現在の体質や疾病リスクなどを明らかにしようとする動きが出始めている。

AI活用で疾患発症前の介入目指す

 プロテオミクスの実用化を目指すaiwellは、微量の血液から得られるたんぱく質の情報を、AIを活用して解析する「AIプロテオミクス」の研究を東京工業大学と協働で進めている。この技術を応用して、疾病の発症リスクや薬の効き具合などを“予兆”の段階から捉え、未病の状態から超早期に人の健康に介入することで疾病の発症を予防したい考えだ(関連記事:病気の“予兆”が分かる「AIプロテオミクス」とは何か)。

 病気を発症して人が体の変化を自覚する前に、体内ではその疾患に関連するたんぱく質に変化が起きることが分かっている。どのたんぱく質の変化が、どの疾患と関連するのかについては、既に世界でさまざまな研究が行われており、多くのデータが蓄積されているという。これを活用し、たんぱく質の状態が分かる過去と現在の画像を比較することで、どの疾患の発症リスクが高まっているかが分かるというわけだ。

 しかしこれまでは、たんぱく質の画像を簡便かつ短時間に得ることができず、医療や健康分野に応用することが難しかった。そんな中、東京工業大学は、画像データを簡便に取得し、大量の画像をAIで判断する技術の開発に成功した。これにより、従来の約100分の1のコストかつ約5分の1の時間で、プロテオミクスのデータを取得することが可能になったのだ。

 aiwellは、AIプロテオミクスの技術の実用化を目指し、多様な疾患別のたんぱく質画像の蓄積を行っている。将来的には、健康診断の前に行う一次スクリーニングとしてAIプロテオミクスを導入し、適切な検査への導線を作りたいとしている。

統合失調症の新たな創薬の切り口も発見

 このほか、理化学研究所 脳神経科学研究センター 分子精神遺伝研究チームなどから成る研究グループは、プロテオミクス解析を行い、脳内の硫化水素の産生過剰が統合失調症の病理に関係することを発見した。この事実から、硫化水素産生酵素の阻害剤を開発するといったアプローチによって一部の統合失調症の症状を改善できる可能性があると示唆され、統合失調症の新たな創薬の切り口になると期待されている。

 具体的には、プロテオミクスを行った結果、硫化水素産生酵素の一つであるMPSTたんぱく質の上昇が統合失調症と関連があることが確認できた。特に、毛髪中のMPST遺伝子の発現量が感度の優れたバイオマーカーになる可能性があるという。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)