子宮内フローラとは、子宮内に存在する細菌の集団(細菌叢)のこと。以前は、子宮内には細菌が存在しないとされてきたが、2015年に米国ラトガース大学の研究で、子宮内にラクトバチルス菌が存在することが確かめられた。

 ラクトバチルス菌は善玉菌で、細菌性膣症や酵母感染症、性感染症などの感染症から膣を守るとされている。この研究では、ラクトバチルス菌が着床時の免疫に影響を与えている可能性が示唆された。

 さらに、2016年には米国スタンフォード大学が、子宮内の菌環境の乱れによって体外受精の結果に影響が出るという研究成果を発表した。具体的には、膣や子宮内の細菌叢と体外受精の成功率を調査したところ、ラクトバチルス属(ラクトバチラス)が豊富な子宮環境ほど、妊娠率や妊娠継続率が高いことが分かったという。こうした発表を機に、子宮内フローラに関する研究やサービス開発に注目が集まるようになった。

不妊治療向けサービスとして浸透

 遺伝子検査スタートアップのVarinos(バリノス)は、2017年12月に世界で初めて「子宮内フローラ検査」を実用化した。次世代シーケンサーによって子宮内の菌環境を調べる検査で、現在は全国140以上の医療機関向けに提供している(関連記事:「子宮内フローラ」で不妊治療の成功率を高める)。

 子宮内フローラ検査では、不妊や着床障害の原因となり得る子宮内の乳酸菌や病原性細菌を網羅的に調べることができる。医療機関から送られた検体をVarinosの次世代シーケンサーでDNA解析するという検査フローで、2週間ほどで結果が出る。検査費用は医療機関によるが、相場は4~5万円程度。

 同社は日本産科婦人科学会が進めている着床前遺伝子検査(PGT-A)の特別臨床検査に解析機関として参加するなど、子宮内フローラ検査の結果を用いて、不妊治療の専門家との共同研究も積極的に行っている。例えば、過去の共同研究からは、不妊治療を受けている女性は子宮内のラクトバチルス菌が少ない傾向があることが分かったという。

 妊娠や出産が成立するためには、母体が免疫寛容によって受精卵を受け入れる必要がある。この間、ラクトバチルス菌が悪玉菌を寄せ付けないように働き、免疫を活性化させないことで、子宮内を妊娠や出産に適した環境に保つことができると考えられている。一方、ラクトバチルス菌が少ないと、子宮内に病原性の菌が入り込んでしまい、菌を排除しようとして子宮内膜での免疫が活性化し、受精卵の着床まで妨げてしまう恐れがある。

 そんな子宮内フローラの状態を整えるためには、抗菌・抗ウイルス作用などを持つ多機能性たんぱく質のラクトフェリンの摂取が効果的だと考えられている。Varinosが不妊治療クリニックと行った共同研究で明らかになった。Varinosではラクトフェリンのサプリメントも販売している。