セレンディピティとは、英語の「serendipity」で、「偶然の幸運な出合いによって予想外のものを発見すること。または発見する能力(遇察力)」の意味。ビジネスでは、社員同士の雑談や何気ない会話、交流などが、課題解決のヒントやイノベーションの創出につながることがある。リモートワークが普及・拡大する中、実際に人が集まるからこそ生まれるこうした利点が見直され、オフィスが持つ根源的な価値や機能として再評価を受けている。

 セレンディピティの好例として挙げられるのが、3Mのポストイットの誕生秘話だ。強力な接着剤の開発を進めていた3Mの科学者であるスペンサー・シルバー氏は、ある時「しっかりとは接着しない接着剤」を発見し、その使い道について社内のあらゆる部門と相談した。

 5年後、「讃美歌集のしおり」として使うアイデアを思い付いたのが、同社のアート・フライ氏。その後2人は、連携して製品開発に当たることとなり、「社内でのコミュニケーションツール」の発想を得た新商品は、今に至る大ヒット商品となった。

 オフィスでフリーアドレス制を導入したり、コピー機の周りをマグネットスペースとして活用したり、社内カフェを設置することなどが勧められるのは、このセレンディピティを高めることも目的の1つ。社員が自然に関り合える交流の場をつくり、コミュニケーション機会を増やすことで、「予期しない化学変化」の可能性を高めることが期待できるというわけだ。

 もちろん、Zoomなどオンラインでもセレンディピティを得ることはできる。オンラインでセレンディピティを生み出すための技術や手法の開発は、今後ますます加速するだろう。注目されるのは、その過程で今あるオフラインの優位性の評価がどう変わるのか、または変わらないのかということ。未来のワークプレースを展望する重要なカギになりそうだ。

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)