空飛ぶクルマとは、中短距離での空の移動を可能とする、自動運転ができる電動の航空機のこと。主に垂直離着陸可能なものを指す。もっとも、技術開発の途上にあり、定義は明確ではない。今後、その枠を超えた機体が出ている可能性も大いにある。

 2020年1月、トヨタ自動車が空飛ぶクルマ開発で先行してきた米国スタートアップのジョビー・アビエーションに3億9400万ドル(約430億円)を出資。同年12月にはジョビーが米配車大手ウーバーの空飛ぶクルマ開発部門を買収した。他にも東大発のスタートアップであるテトラ・アビエーションが米国で開催された空飛ぶクルマ開発の国際コンペで最高の賞を得るなど、日本企業による周辺産業への関与の動きが目立つ。

 空飛ぶクルマの実現は、「空の移動革命」とも言われ、交通や物流などに大きな変化をもたらす可能性がある。従来の航空機よりも生産コストを下げ、空の移動を身近にするからだ。交通インフラの整備が従来ほどでなくても山間地や離島などへのアクセスの問題を解消する可能性があるなど、社会課題の解決にも貢献すると見られる。

 ヘルスケア領域では、救急医療での活用などが想定される。それを含めて新産業としての期待も高く、米国モルガン・スタンレーは2040年代に世界市場規模が1兆5000億ドル(日本円で約160兆円)に及ぶと推測する。

技術開発と環境整備が課題に

 空飛ぶクルマ開発が進むのは、航空機の二酸化炭素排出削減が注目される中、電池性能を含めた電動の技術開発が進歩したことが大きい。これによって小型航空機の電動化が可能になり、2010年前後から米国などで空飛ぶクルマ開発を目指す企業が生まれるようになった。日本でも前述のテトラ・アビエーションのほか、スカイドライブという企業が創業。米国のウーバーや日本のトヨタ自動車なども参入し、空飛ぶクルマの事業化は加速した。

 日本国内ではこうした動きを踏まえて、2018年8月、経済産業省と国土交通省が「空の移動革命に向けた官民協議会」を設立。同協議会の検討の中で、「電動」で「垂直離着可能」な「無操縦者」の航空機が空飛ぶクルマの一つのイメージとして示されるようになった。電動垂直離着陸型航空機(electric vertical take-off and landing aircraft、eVTOL、イーブイトール)と示されることも多い。

 同年には空飛ぶクルマ実用化へのロードマップが示された。2019年以降に試験飛行や実証試験を開始し、2020年代の半ばまでに実用化。2030年代から実用化をさらに拡大させていくとの方向性である。ロードマップは毎年更新される。

 課題として大きいのは、技術開発と環境整備の2つの側面だ。技術開発においては安全性や信頼性の確保のほか、自動飛行や運行管理システム、モーターなどの電動推進システムの開発など。一方の環境整備の面では、機体の安全性の基準、技能証明の基準、空域や運航、電波利用環境、離着陸場、運送や使用事業の制度などがある。

 さらに、社会に対しても、機体や自動操縦の安全性、トラブル発生時の対策、落下物、騒音問題などどう対応していくかを検討する必要がある。


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