バイオデザインとは、医療現場のニーズを起点とした、イノベーションを実現していく考え方のこと。2001年に、米国スタンフォード大学のポール・ヨック氏が、「スタンフォード・バイオデザイン・フェローシップ・プログラム」を開始したことに端を発する。

 このプログラムは10カ月のコースで、医学、工学、ビジネスのバックグラウンドを持つ大学院生が学際的なチームを構築。その中で、解決されていない医療現場のニーズを特定していき、解決策を提案および実行していく。技術起点ではなく、問題を起点にしているのが特徴となっている。あくまで解決すべき課題に注目して、技術の活用は手段としてとらえて、その利用自体を目的にしないところが重要になる。

 バイオデザインは、「特定(identify)」「考案(invent)」「実施(implement)」という3Iと呼ばれる3段階のプロセスに分けてとらえられ、このプロセスを繰り返して、イノベーションを実現していく。

 例えば、2005~2006年にこのプログラムのフェローだったウダイ・N・クマール氏はバイオデザインの考え方により医療機器開発を行い、2006年にIRHYTHM TECHNOLOGIESの創業し、現在ではナスダック上場企業となっている。

 クマール氏の例で見ると、循環器科医だった同氏は医療機関で使っている「ホルターモニター」に課題を特定した。心臓機能の異常である不整脈を検出する装置で、ハードディスクのようなサイズであるために運動やシャワーのときに装着できず、操作が複雑で使いづらかった。そこで入院しなくても心電図を簡単に測定できるようにすれば、潜在的な心電図の異常を検出可能になると想定した。

 クマール氏は、かかりつけ医から簡単に提供できて、高齢者や障害のある人が簡単に心電図を測れる、安価な医療機器を作り出すことが、医療現場のニーズを満たすとしてデバイスを考案。その考え方に沿って、新たな医療機器の開発を実施。クマール氏によると、当初は無線技術によりリアルタイムでデータを送信する技術の活用を進められたというが、高齢者などに使いやすくする課題解決に繋がらないと判断。データはローカルに保存する形にし、最長14日間測定した後、郵送により医療機関に返却するシステムにしたという。