オートファジーとは、ヒトを含む真核生物の細胞に備わるシステムの1つで、損傷を受けたり使用済みとなったりしたたんぱく質や小器官を回収し、分解、リサイクルする仕組みのこと。「細胞の掃除役」として機能する。ギリシャ語の「オート(自ら)」と「ファジー(食べる)」を組み合わせた造語で、日本語では「自食作用」と呼ばれる。

 2016年、東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞したことで有名になったが、オートファジーには、(1)細胞の新陳代謝を行ったり、(2)細胞内の有害物質を取り除いたりする役割があることが分かってきて、オートファジーの活性化による老化制御の可能性が注目を集めるようになった。

 オートファジーと老化の関係を理解するのにまず覚えておきたいのが、「ルビコン」と呼ばれるたんぱく質の存在だ。オートファジーの機能は加齢と共に低下するが、その原因の1つと考えられるのがルビコンの増加。ルビコンの動きを抑えることができれば、老化を制御し、加齢に伴ってかかりやすくなる加齢性疾患などを防ぐことが期待できる。

 ルビコンの抑制効果は、動物実験で証明されている。大阪大学の吉森保栄誉教授らが、ルビコンをなくした線虫やハエの寿命を測ったところ、寿命は平均で20%延びたという。一方、同時にオートファジーに必要な遺伝子を破壊すると、寿命は逆に縮む結果になった(ただし、オートファジーは万能とは限らず、脂肪細胞で活性化し過ぎると、糖尿病のような症状が出るなども分かってきた)。

 こうした基礎研究の進展を背景に、国内企業による社会実装も進められている。例えば、大阪大学発のスタートアップ「AutoPhagyGO」(オートファジーゴー)は2020年5月、UHA味覚糖と共同開発したサプリ「オートファジー習慣」を市場投入したのに続き、2021年6月には、協和と共同開発した美容サプリ「ウロリチンカプセル」の販売をスタートさせた。2019年に設立された同社は、オートファジーに関する知見を効率的に産業化し、社会実装することを目的としたベンチャー企業。オートファジーの低下を防ぐ薬剤の開発なども目指している(関連記事:あの「オートファジー」を健康長寿に活用、阪大発ベンチャー)。

 とはいえ、基礎研究で世界を牽引してきた日本も、事業化という点では、欧米に立ち遅れているという見方も強い。そのキャッチアップを目指し、2020年設立されたのが、一般社団法人日本オートファジーコンソーシアムだ。前出の吉森大阪大学栄誉教授が代表理事を務めるコンソーシアムのミッションは、産学官一体となった活動により研究成果の事業化に努め、競争力を保つこと。コンソーシアムには、アカデミアを始め、前出のオートファジーゴーや花王、資生堂、ダイセル、ファイン、小林製薬、東洋紡などが参画している。

[参考文献]

1)『100年ライフのサイエンス』(日経BP)

2) 『LIFE SCIENCE(ライフサイエンス)長生きせざるをえない時代の生命科学講義』(日経BP)

3)AutoPhagyGO

4)一般社団法人日本オートファジーコンソーシアム

(タイトル部のImage:Goss Vitalij -stock.adobe.com)