社会的処方(social prescribing)とは、患者の課題を解決するために、地域の活動やサービスなどの社会参加の機会を“処方”すること。社会的に孤立しないよう地域資源を活用することで、患者の健康やウェルビーイング(幸福で豊かであること)を向上させることを目的としている。

 英国では、2016年から社会的処方についての全国的なネットワークが構築され、既に仕組みが稼働している。具体的には、リンクワーカーと呼ばれる人材が、家庭医などの保健医療専門職者から支援が必要だと診断された患者を地域活動へ橋渡しするという仕組みである。ボランティア活動や共通の趣味を持つコミュニティー、支援付き就労といった地域資源を処方する。適した活動がない場合は、リンクワーカーが患者とともに新たな活動を創り出すこともあるという。

 社会的処方の対象となり得るのは、医療的介入に加えて、社会的または精神的にケアが必要とされる場合だ。例えば、長期の慢性的な症状を抱えている人やメンタルヘルス面で支援が必要な人、社会的に孤立していたり不利な立場にいたりする人などが対象となる。

 社会的処方の効果としては、社会的な孤立の改善や孤独感の解消、不安・抑うつの軽減などが報告されている。趣味の集まりに参加した高齢者のうつ症状が改善した例もあるという。

 そもそも、こうした概念が広まったのは、人の健康は遺伝子や生活習慣といった生物学的要因だけではなく、社会格差やストレス、社会的排除といった社会的な要因にも影響を受けることが分かったからだ。英国では、WHOが公表した健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health:SDH)のうち、非医療的なニーズに対するアプローチとして社会的処方を進めてきた。

*健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health:SDH) 健康を決定する10の社会的な要因のこと。「社会格差」「ストレス」「幼少期」「社会的排除」「労働」「失業」「社会的支援」「薬物依存」「食品」「交通」。