上手な医療のかかり方とは、「いのちをまもり、医療をまもる」をモットーに、厚生労働省が2019年から始めた国民的プロジェクトを指す。医療の危機と現場崩壊が深刻さを増している状況を踏まえ、医療も社会資源の一つとして大事にしていくために、医療の恩恵を被る「すべての人」がそれぞれ具体的なアクションを起こすことを求めている。

 もともと厚労省は、「上手な医療のかかり方を広めるための懇談会」を2018年10月に発足させ、議論を重ねてきた。背景には、各種調査から「医師は全職種中、最も労働時間が長く」(総務省統計局「平成24年度就業構造基本調査」)、日本の医師の「3.6%が自殺や死を毎週または毎日考える」「6.5%が抑うつ中等度以上」「半数近くが睡眠時間が足りていない」(日本医師会日本医師会 勤務医の健康支援に関する検討委員会答申[平成28年3月])という厳しい実態が浮かび上がったことがある。

 患者・国民が安心して必要な医療を受ける観点からは、医師の働き方改革や、地域における医師確保対策といった医療提供者側の取組だけでなく、患者やその家族である国民の医療のかかり方に関する理解が欠かせない──。懇親会はそうした視点で2018年12月に報告書を取りまとめ、医療機関の適切な受診に向けて下記の5つの方策を掲げた。

  • 患者・家族の不安を解消する取組を最優先で実施する

  • 医療の現場が危機である現状を国民に広く共有する

  • 緊急時の相談電話やサイトを導入・周知・活用する

  • 信頼できる医療情報を見やすくまとめて提供する

  • チーム医療を徹底し、患者・家族の相談体制を確立する

 また「市民」「行政」「医師/医療提供者」「民間企業」の主体ごとに、医療危機を引き起こしている要因と、望ましいアクションの事例も提示。例えば市民向けには、夜間や休日に受診を迷ったら、子どもの病気に小児科医らが対応する「#8000」や、救急車を呼ぶべきかどうかの助言がもらえる「#7119」といった短縮ダイヤル活用することなどを挙げた。

 そして、これらの方策を国が速やかに具体的施策として実行し、すべての関係者の取組が前進するよう、進捗をチェックし続けることの重要性を訴えた。