シンデレラ体重とは、若い女性たちにとっての「理想の体型」の象徴のこと。「モデル体重」とも呼ばれる。

 2016年ごろから女子高生を中心にSNSで盛んに発信されたワードである。由来を探ると、「ガラスの靴を履いても割れないほどの体重」「細身の王子様が抱きかかえられる体重」「お伽話でしかありえない体重」など諸説あるもよう。若い女性たちがこの体重を目指して涙ぐましいダイエットをしていることも、ネットへの様々な書き込みから読み取ることができる。

 ところでこのシンデレラ体重は、「理想の体重」どころか、女性たちの健康を脅かすものと言える。不妊や病気の原因にもなり、さらには、次世代の病気のリスクも高める「危険な体重」である。

 シンデレラ体重の具体的な計算式は、「身長(m)×身長(m)×20×0.9」とされている。これを、体格指数(BMI)の数値に置き換えると18となる。BMI18というと、日本肥満学会が定めた基準で、やせ(低体重)と分類される体形。同学会は、BMI18.5未満を、体調不良や病気のリスクが高まる体形と位置付けている。つまり、シンデレラ体重を達成した女性は、かなり不健康な体形であることになる。

 痩せ過ぎの体形では、想像以上に広範な健康リスクが生じるが、その深刻さが当の若い女性たちはもとより、一般の社会にもあまり認識されていない。痩せている=エネルギー不足で栄養失調の状態は、ホルモン、血管、精神、骨、月経、免疫、代謝、消化、心血管など全身の健康状態に悪影響を及ぼす。そのため、不定愁訴や疾病の原因になり、無月経のリスクも高まるため、妊孕性にも悪影響を及ぼす。

 さらに近年、痩せた女性が妊娠すると、生まれてきた子どもが将来、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になるリスクが高まるという事実が明らかになってきた。本人だけでなく、健康リスクは次世代にも受け継がれるわけだ。

 だが、日本の女性は「痩せ願望」が強く、20代女性の5人に1人(20.7%、2019年)がBMI18.5未満だ。成人女性全体で見ても、やせ女性の割合は先進国の中で最も高く、国際的にその異常事態が指摘されているほどだ。

 もちろん、国内でも問題は認識されており、2000年に設定された「健康日本21」では、「20歳代女性のやせの者」(23.3%、1997年)を10年後には15%以下にするという目標が示されていた。だが、実際の評価時(2009年)には22.3%で未達。第二次「健康日本21」では、2020年に20%以下にするとの目標になったが、最新の2019年の数字を見ても20.7%(20年度、21年度はコロナウイルス流行により調査自体が中止)で、この約20年間、20代女性のやせ割合はほぼ横ばいのまま。その結果として、20年後の今、やせた妊婦から生まれた子供たちが、妊娠・出産年齢にさしかかっており、この世代の妊婦では妊娠糖尿病などが増えているという。

 一刻も早く、シンデレラ体重を目指すことの危険さを女性たちに啓発し、極端なやせ願望を軌道修正しなければならない。例えば企業は、健康経営で「女性のやせを減らす」というテーマに取り組むべきだろうし、ダイエットをあおりすぎる広告やメディアの在り様なども、今一度、考えてみる必要があるだろう。健診などで痩せすぎを早期に発見し、適切な体重管理をするようなサービス、商品の開発などが待たれている。

(タイトル部のImage:arkgarden -stock.adobe.com)

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