リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(Reproductive Health and Rights)とは、「性と生殖に関する健康と権利」のこと。全ての人の性と生き方に関わる重要な権利だ。ヘルスケアに関する基本的な権利として世界で浸透・獲得が課題となっており、日本でも、女性の支援や健康経営を考える上で欠かせない視点として注目されている。リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(SRHR)と表記されることもある。

 リプロダクティブ・ヘルスは、性や妊娠・出産に関わる全てにおいて、身体的、精神的、社会的に本人の意思が尊重され、自分らしく生きられること。リプロダクティブ・ライツは、「私の体は私のもの」という視点で、自分の性や体、子どもを持つかどうかに関することを自分で選択し決める権利を指す。これらを合体したのがリプロダクティブ・ヘルス&ライツで、その基礎となる議論は、1960年代後半頃、女性の人権と健康を守る運動から始まったとされる。

 この言葉が初めて公の場で提唱され明文化されたのは、1994年にエジプトの首都カイロで開催された国際人口開発会議だった。179カ国が採択した「カイロ行動計画」では、リプロダクティブ・ヘルス&ライツを「全てのカップルと個人が自分たちの子どもの数、出産間隔、ならびに出産する時期について自由に責任を持って決定でき、そのための情報と手段を得ることができる基本的権利」とした。これには、全ての人が、差別、強制、暴力を受けることなく、生殖に関する決定を行える権利が含まれる。

 国連が2015年にまとめた「持続可能な開発目標(SDGs)」では、2030年までに達成する17の目標の5番目に「ジェンダー平等の実現」を挙げ、その中のターゲット5.6で、リプロダクティブ・ヘルス&ライツの獲得を掲げている。この目標の達成度を測るグローバル指標5.6.1では、「性的関係、避妊、生殖に関するヘルスケアについて、自分で意思決定できる15~49歳の女性の割合」が用いられている。「世界人口白書2021」によると、その割合はデータのある57カ国の平均で55%、マリ、セネガルなど10%以下の国もあった。

 さらに、目標達成度を測るグローバル指標5.6.2では、「15歳以上の全ての男女が平等に性と生殖に関するケアや情報、教育が得られるように、国が法律をきちんと定めているか」が問われている。具体的には、マタニティケア(妊婦健診や産科救急、中絶、中絶後のケア)、避妊や緊急避妊、学校での包括的性教育、性に関する健康とウェルビーイング(HIV検査とカウンセリング、HIVの治療とケア・健康状態の守秘義務、HPVワクチン接種)といった項目について、15歳以上の男女が情報や教育が得られるように国が法令を定めることが重要とされる。

 日本では、内閣府男女共同参画局が、生涯を通じた女性の健康支援施策の一環として、「リプロダクティブ・ヘルス&ライツに関する意識の浸透」を掲げている。しかし、その遵守を審査する女性差別撤廃委員会には、日本の刑法には女性のみに科された刑法堕胎罪があることなどの問題点が指摘されている。また、日本の人工妊娠中絶に関する法律である母体保護法では、既婚者の場合、配偶者の同意がないと中絶できないなどの問題もある。避妊薬や緊急避妊薬へのアクセスのハードルも現時点では高く、先進国の中で、日本はリプロダクティブ・ヘルス&ライツの獲得が遅れた国の1つだ。

 派遣労働、契約社員、パート社員、正社員も含め、「妊娠リストラ」「育休リストラ」などへの懸念から、自分が産みたい時期に産めない女性も少なくない。また、女性に限らず、性的マイノリティ、障害者などもリプロダクティブ・ヘルス&ライツが尊重されるべき存在だ。企業内の労働環境整備や出産・育児・不妊治療支援などを含め、社会の様々なシーンにおいてリプロダクティブ・ヘルス&ライツの尊重、支援が求められている。

[参考文献]

1)「世界人口白書2021」日本語抜粋版(国連人口基金東京事務所)

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