在宅死とは、住み慣れた自宅、子供や親族の家で死を迎えること(在宅死問題は、在宅死を選択できるようにするための課題や議論などの総称)。厚生労働省の「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」が2017年末に実施した調査では、国民の63.5%が「自宅で最期を迎えたい」と希望している。しかし、2020年の死亡者のうち在宅死できた人の割合は15.7%で、68.3%は病院で亡くなっている(※)。

 核家族化が進み、独居高齢者、生涯独身の人も増える中、在宅死を希望する人が人生の最終段階を安心して自宅で過ごすためには、在宅ケアを支えるサービスやビジネスの充実とイノベーションが求められる。

 日本ではもともと在宅死が当たり前で、1951年の在宅死率は82.5%だった。1961年に国民皆保険制度がスタートし、少ない負担で入院治療が受けられるようになったことや核家族化が進んだことで在宅死は減少した。1977年には病院で死亡した人の割合が45.7%となって、在宅死率(44.0%)を初めて上回った。

 その後、在宅死率は激減し2005年と2006年には12.2%と過去最低を記録した。2004~15年まで在宅死率は12%台で横ばいだったが、人工呼吸器、点滴、心電図のセンサーなど、たくさんの管につながれた“スパゲッティ症候群”のまま死を迎える病院死への批判などから在宅死が見直され、2016年以降徐々に増加している。

 在宅死のメリットは、住み慣れた場所で家族やペット、好きなものに囲まれて、人生の最終段階を自分らしく過ごせることだ。体の状態にもよるが、最期まで食べたいものを、口から食べるなどして、穏やかに死を迎えられることも多い。病院で痛みがコントロールできずに苦しんでいた人が、生活の場である自宅へ帰っただけで痛みが軽減して、医師の予想より長く生きる例もある。

 デメリットは、病院のように、すぐ駆け付けられ範囲に看護師や医師などがいるわけではないこと。場合によっては家族に多大な負担がかかることがある。なお、定期的に医師の訪問診療を受けているか、死亡診断書を書いてくれるかかりつけ医がいる人が在宅死した場合には、「不審死」とはならず、警察を呼ぶ必要はない。