医療的ケア児とは、NICU(新生児集中治療室)などに長期入院した後、引き続き人工呼吸器による呼吸管理やたんの吸引など、医療的なケアが日常的に必要な子供たちを指す。厚生労働省の推計では、在宅で暮らす医療的ケア児は全国に約2万人いるとされ、医療技術の発達に伴い過去10年でほぼ2倍になった。

 医療的ケア児は2016年に改正された障害者総合支援法の中で初めて定義され、支援体制を整えることが各省庁および地方自治体の「努力義務」となった。その後、自民党や立憲民主党など超党派の議員連盟や支援に取り組む団体が中心となって、より大がかりな全国一律の制度を作るためにも新たな法律の枠組みが必要であるとして、新法の検討を開始。5年にわたる議論の末、法案提出にこぎつけ、2021年6月には「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」(以下、支援法)が成立し、同年9月に施行された。支援法では国・自治体による支援を「責務」にしたのが特徴で、どんな地域にいても適切な支援を受けられることとした。

 支援法が目指すのは安心の環境づくり。医療的ケア児本人はもちろん、家族にも着目しており、学校や保育所には看護師の配置などを求めるほか、家族らの相談に応じて情報を提供する「医療的ケア児支援センター」の設置を都道府県に要請して、家族の離職防止につなげる。

 医療的ケア児への支援は、医療機関に支払われる診療報酬や、障害者支援サービスの公定価格である「障害福祉サービス等報酬」の見直しを通じても強化が進む。ここ数次の報酬改定では、主治医が緊急時に往診したり、子どもの受診状況などを学校医らと共有したりした場合の診療報酬が増点されたほか、幅広い事業所で医療的ケア児の受け入れが進むよう、受け入れ態勢を強化した事業所などに対する基本報酬や取り組みごとの加算額が大幅に拡充された。

 こうして環境整備が進みつつあるも、人材確保などの課題から、医療的ケア児の居場所はいまだ不足しており、家族が求める支援に結びついているとも言い難い。厚労省は支援が進まない自治体では何が支障になっているのなどを見極め、対策強化に力を注ぐ考えだ。

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