日経BPは2021年10月11~22日に「日経クロスヘルス EXPO 2021」をオンライン開催した。10月20日に行われた「日本医師会コラボレーション企画」では、日本医師会副会長の今村 聡氏と日本医療機器開発機構 代表取締役CEOの内田毅彦氏が登壇。「AIホスピタルによる医療AIの社会実装のためのエコシステムについて」と題した講演を行った。

日本医師会副会長の今村 聡氏
日本医師会副会長の今村 聡氏
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 前半ではまず今村氏が日本医師会の取り組みを紹介した。日本医師会をはじめとした提言により、「AIホスピタルによる高度診断、治療システム」が、内閣府が創設した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期(2018年度~2022年度)課題に採択された。これにより、AIホスピタルが強力に推し進められることになったという。

 AIホスピタルとは、AIやIoT、ビッグデータ技術を用いて高度で先進的な医療サービスを、広く医療現場で提供できるようにするというもの(関連記事)。医療は医学・工学・薬学・ゲノム研究などの急速な進歩に伴い、高度化・複雑化・先進化・多様化している。そんな現状にあって、AIホスピタルシステムを開発、社会実装することで、様々な課題の解決を目指すという。

 具体的にはこんな具合だ。AIホスピタルが実現すれば、高度で先進的な医療サービスの提供に加え、医療機関における効率化が実現される。「その結果、超高齢社会における医療の質の確保、医療費増加の抑制、医療分野での国際的競争力の向上、医療現場での負担軽減につなげられる」と今村氏は言う。 

 今年4月には、AIホスピタルの実装化に向けたプラットフォームとして経済産業大臣と厚生労働大臣の認可による「医療AIプラットフォーム技術研究組合(通称HAIP)」を設立。また、AIホスピタルシステムのガバナンス体制を構築するために日本医師会内部に「日本医師会AIホスピタル推進センター(通称JMAC-AI)」を稼働させた。

 AIやICTは世界的な企業が多額の資金を投入して猛烈なスピードで開発を進めており、これらに対抗するには日本発の質の高いAIシステムを提供する体制が必要になる。そのためには各社がバラバラに開発を行なうのではなく、共通のプラットフォームを整備してその質を担保することが必要で、これをJMAC-AIが担うとした。

 JMAC-AIは今年7月から、プラットフォームの技術的検証を行うために試行運用も開始。第1弾として、画像診断補助を行う医療AIサービスをプラットフォームに搭載して、医師・医療機関からの画像データの取得、AIサービスによる分析、分析結果の医師への報告といった一連の流れの検証を進めている。

 続いて今村氏は、医療情報を研究や開発につなげていくために日本医師会が100%拠出して設立した「日本医師会医療情報管理機構(通称JMIMO)」の活動を紹介。医療情報の安全な収集と個人情報の匿名加工、医療機関に対する個人情報の取り扱いに関する支援や利活用に対するデータ活用の支援を行うとした。

 すでにJMIMOは国立病院機構48病院のほか、青森県の弘前市および弘前大学と契約を締結。年末には約200万人の電子カルテデータを取得できる見込みで、「自治体と認定事業者の契約締結は全国初の事例」とその取り組みに期待を示した。

 日本医師会は、検診データの標準化に向けた取り組みも進めている。「日本の検診事業は乳幼児から高齢者における様々なライフステージにおいて多くの法令や制度に沿って行われており、データ管理もバラバラの状況」と問題を指摘。「一元的に管理することで国民のライフステージに応じた適切な保健事業につながる」と、その必要性を訴えた。

 これまでに10団体と連携し、健診標準フォーマットの策定と運用を推進。検診データの活用は喫緊の課題であるため、健診実施機関が検診データをクラウド上で健診標準フォーマットへ変換できる「健診結果データ標準化共同センター」の設置も進めているという。

 今村氏は締めくくりに「AIホスピタルが切り開く日本独自の医療技術研究開発のエコシステム」として、各医療機関等とここまで紹介したJMAC-AI、J-MIMO、HAIPの連携が進むことで医療現場が抱える様々な課題を解決できるとの見解を示し、その実現に向けて「医療のリアルワールドデータ、ビッグデータ解析やAI技術の活用によるITや医療機器の開発と普及による、質の高い治療技術の導入を推進していきたい」と決意を述べた。