出典:「日経メディカル」2021年11月4日付の記事より

 2021年10月22日に開催された「日経クロスヘルス EXPO 2021」(主催:日経BP)のオンラインセミナー「循環器内科医と考えるオンライン診療マネジメント──心不全予防のためのオンライン診療パス試案の提示と残る課題」では、国際医療福祉大学循環器内科学教授の岸拓弥氏から心不全を予防するための高血圧治療をオンラインで実施するためのクリニカルパスの試案が提示され、これを口火として5人の識者によってオンライン診療の在り方について議論された。

 心不全予防のための高血圧診療をオンラインで行うためのクリニカルパスの試案を検討した岸氏。冒頭で「循環器内科医は心不全をなんとかしたいと思っているが、治療手段は非常に限定的だ。早期の段階で進行を防ぐことが重要であり、そのためにできるだけ多くの高血圧患者をしっかり管理しなければならない」と語り、その手段の1つとしてオンライン診療は有効ではないかと指摘した。

 というのも、現在日本に高血圧者は4300万人いるとされ、そのうち治療を受けて降圧目標を達成できているのはわずか27%しかなく、受診はしているものの目標を達成できていない人は29%に上る。さらに11%は受診しておらず、33%は自分の血圧値を知らなかったり、高血圧であることを認識していないのが現状だ。岸氏は、こうした現状を打破するための新しい選択肢としてのオンライン診療を提案。外来受診とは違う新たな選択肢があれば、高血圧を放置してしまっている患者層へのアプローチができるかもしれないと期待する。ただし、オンライン診療そのものは始まったばかり。しかも2020年初からのコロナ禍でオンライン診療は広まる可能性もあったはずなのに、現実にはそんな印象はない。そこでオンライン診療のクリニカルパスを作成し、診療を均てん化した上で国民にこの新しい選択肢を周知する必要があるのではないかと考えた。

 岸氏が考えるクリニカルパスは、初診からオンライン診療が可能かをチェックするところから始まり、1カ月おきにオンライン受診し、6カ月を一単位として、チェックすべき検査項目(身長・体重、BMI、血圧、心拍数、心電図異常、心エコー、尿・血液検査など)や処方内容、確認すべき事項をまとめたパスだ(図1、2、3)。検査数値については、初回は健康診断結果や他院から提供される診療情報、地域医療情報ネットワークを介した情報入手などを想定しており、6カ月後以降は外来受診や改めて健康診断の結果の入手などを介して確認する。

図1●岸氏のプレゼンの様子
図1●岸氏のプレゼンの様子
岸氏が試案として検討したオンライン診療用のクリニカルパスでは最初に初診からオンライン診療が可能かを評価するチェック項目がある
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 オンライン診療だからといって診療を簡略化していいわけではない。そのためにも、診療のたびにアウトカムと目標を達成できているかチェックすることが必要だ。また患者の自己評価や医師が患者の改善を実感できるかといった項目もクリニカルパスの中で確認することで、患者の治療に対する満足度、医師のやりがいにつなげられる。「こうしたチェックができればオンライン診療も通常の外来診療と同じように進められるのではないか」と岸氏はクリニカルパスに込めた狙いを紹介した。

図2●岸氏は「治療効果を最大限に得るために毎回目標やアウトカムをチェックすることが重要」と語る
図2●岸氏は「治療効果を最大限に得るために毎回目標やアウトカムをチェックすることが重要」と語る
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図3●患者の治療に対する前向きの姿勢や医師のやりがいを実感させるために、それぞれがセルフチェックをするが重要という思いを込めた
図3●患者の治療に対する前向きの姿勢や医師のやりがいを実感させるために、それぞれがセルフチェックをするが重要という思いを込めた
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