人間は生物学的に120歳まで生きることが可能だといわれています。より多くの人々が健康長寿を全うできるよう、いま世界中で、医療関係者だけでなく、IT(情報技術)、食品、住宅、アミューズメントなど様々な分野のスペシャリストたちが、新たなヘルスケアサービスを研究開発し、現場に実装しようとしています。ここでは、そんな世界の動きの中で最近1週間に発信された、今後のイノベーションにつながる重要な医療・ヘルスケア分野のニュースを紹介していきます。

 先週は、米ALTEN Calsoft Labs社がスケーラブルなブロックチェーン(BC)臨床試験プラットフォーム「BioPharma Ledger」を開発したと発表しました。BCといえば、仮想通貨が連想されますが、ヘルスケア業界においても、今後BCがインダストリースタンダードとなるといわれています。臨床試験の結果や患者一人ひとりの要配慮個人情報を安全に管理することを可能にするBC技術は、新たなレベルの透明性、プライバシー保護、トレーサビリティーを実現するのでしょうか。(大石有美=バイリンガルコミュニケーター)


以下では、2019年7月1~5日に海外の企業・大学・研究機関・米食品医薬品局(FDA)等が配信したプレスリリースの中から、編集部がピックアップしたものを【ビジネス】【プロダクト/サービス】【要素技術】に分類しました。各項目をクリックすると、それぞれのプレスリリース(ウェブサイトやPDFなど)に移動します。

【ビジネス】

  • ALTEN Calsoft Labs社が、スケーラブルなブロックチェーン(BC)臨床試験プラットフォーム、BioPharma Ledgerを開発。世界最大のオープンソースBCイニシアチブであるエンタプライズ・イーサリアム・アライアンス(EEA)のBlockAppsのミドルウェア・プラットフォームを活用したBC技術を活用すれば、新たなレベルの透明性、プライバシー保護、トレーサビリティーを実現することが可能となる。新薬のR&D(研究開発)からマーケットへの提供までの一連のプロセスを向上させることで、コストと時間の削減だけでなく、高いセキュリティーと信頼性を確保し、今後BCの活用がライフサイエンスのインダストリースタンダードになることが期待される。
    ALTEN Calsoft in Partnership With Clinlogix Launches Blockchain for Clinical Trials

  • スペインGrifols社が最新の静脈注射ソリューションの製造ラインをアフリカに構築することを発表。来年稼働予定。同社のアフリカにおける初のプロジェクトとなる。モロッコの人工透析ソリューションプロバイダーのSoludia Maghreb社と提携。
    Grifols selected to build its first intravenous solutions manufacturing line in Africa

  • プレシジョン・ヘルスを推進する米Forum Health社が、SevaMed Institute社を買収し、フロリダにオペレーションを拡大する。プロアクティブな処置を取ることで、病気の症状だけでなく、ライフスタイルに起因する病気の根本原因の解決に挑む。検査、診断、治療、予後の全領域でコストを抑え、コーチングや患者に優しい個別化したケアを提供するプレシジョン・ヘルスにより、患者一人ひとりのエンパワーメントを推進。うつ病や自己免疫疾患などの新たな対応方法を模索する。
    Forum Health Acquires Practice in Tampa Bay Region

  • フランスLaboratoire Synbionyme社のプロバイオテック・スキンケア製品が人気サイトVitaBeauti.comで購入可能になる。R&Dチームが2年間かけて開発したPro-B3が肌の外皮、免疫システム、マイクロバイオータ(環境中の微生物)の3方向にアプローチし、肌バリアの再生とバランスを補強する。Pro-B3の原料は微生物、微生物抽出物、オメガ 3系、6系、9系脂肪酸であり、生きた微生物が肌を美しく保つ力を最大限に活用する。
    Laboratoire Synbionyme's Probiotic Skin Care Product Line Now Available at VitaBeauti.com

  • 調査会社Research and Marketsは、セーフティライトカーテン(侵入検知制御機器)が、2019年から2025年までに最も成長する市場はヘルスケアであると予測している。特にAPACでヘルスケア産業が今後拡大し、製薬会社の製造工場での利用が増加する見込み。ヘルスケア以外の分野も加えると、世界的に160億ドルの市場に拡大すると予測されている。
    Global Safety Light Curtain Market 2019-2025: Rise in Industrial 4.0 and Growing Use of Robotics in the Packaging Industry are Major Drivers

  • フロリダ国際医療博覧会2019において、台湾発のヘルスケア企業4社の画期的なサービスが絶賛された。スマホの糖尿病管理アプリを使用し、オンラインのデジタル日記を投稿し、医療スタッフからタイムリーなソリューションを受けられるシステムや、慢性、難治性の創傷に陰圧閉鎖療法を施せる携帯機器、低侵襲手術を可能にする新たな外科サービス、外科手術に用いるスマート・アイトラッキング技術を用いたハイテク精密3D顕微鏡など、医療品質と患者の満足度向上、コスト削減につながる様々な製品を紹介。
    Taiwan Aims to Boost Sales in US Market with New Cost-Saving Medical Devices

  • Grifol社のXembifyと呼ばれる皮下免疫グロブリンを用いた一次免疫不全治療薬が米食品医薬品局(FDA)に承認され、今年度第4半期に米国での販売が開始される。今後カナダ、欧州市場にも進出予定。免疫グロブリンの販売は2015年から2017年までに10%の成長を見せている。同社は世界初の免疫グロブリンの精製・無菌充填工場の建設に着手しており、2022年から稼働を予定している。
    Grifols Announces FDA Approval of Xembify®, 20% Subcutaneous Immunoglobulin for Primary Immunodeficiencies

  • スタートアップ企業を応援する「Protechtingプログラム4.0」が発表された。ヘルステック、インシュアテック、フィンテックの3分野における戦略的シナジーに焦点を当て、社会的、経済的、環境的影響力の高いグローバルな持続的開発がテーマ。テクノロジーで人間の生活をより保護することができる様々な国際プロジェクトを支援する。イノベーションを起こしやすい文化を醸成し、ビジネスの新たなアイデアを促進・具現化するためのリソースへのアクセスをサポートする。ポルトガル最大のヘルスケアグループLuz SaedaやドイツのHauk & Aufhauser銀行がプログラムに参加。今後南米、アフリカ、欧州、中国、マカオにも活動を展開予定。7月から9月まで、新規参加団体を募集している。
    Fosun Launches Fourth Edition of Its Acceleration Program "Protechting"

米NIHがアルコール計測ツールをホームページ上で提供

【プロダクト/サービス】

  • 米Connexient社の新しい施設案内モバイルアプリ「MSKコンパス」。ニューヨークのMemorial Sloan Ketteringがんセンターの患者と訪問者向けに、車の駐車位置、各受付デスクのロケーション、カフェなど、広大で複雑な施設の中をアプリ画面で案内するサービスを提供。付き添う家族や友人との待ち合わせ場所に活用できる機能も。複数の言語に対応。
    Connexient Launches MSKcompass - Indoor GPS App to Help Patients and Visitors Find Their Way From Home to Appointment

  • 米国立衛生研究所(NIH)が、アルコール計測ツールをホームページ上で提供。各種飲料に含まれるアルコール濃度、カロリー計算、金額、血中アルコール濃度を計測し、どれほどアルコールが強いかを意識せずに飲み過ぎてしまいがちなカクテルのアルコール量も把握しながらコントロールできる。ビーチ、マリンスポーツ、プールなど夏の行楽中の事故の70%がアルコール由来であるという調査結果に基づき、ツールを活用して飲酒による事故予防を呼び掛けている。
    NIAAA: Risky Drinking Can Put a Chill on Your Summer Fun

  • 米Caretaker Medical社がワイヤレス呼吸・血圧モニタリングプラットフォームを販売。携帯型のカプノグラフと酸素濃度計を使用し、麻酔を伴う手術や緊急処置における呼吸状態や気管内のチューブの状態をリモートタブレットアプリ上でモニタリングできる。体に負担の低い装着しやすいチューブを利用し、患者の快適性と、治療の効率化を実現。
    Caretaker Medical Adds ETCO2 (End-Tidal Carbon Dioxide) Sensor to Wireless Patient Monitoring Platform

  • 医療費の支払い手続きと管理がオンラインでできるソフト「Royal Pay」。診察前に、受け取り可能な保険料の確認、見積、承認と支払い手続きを自宅や外出先からできる。患者の医療費計算等の負担を軽減し、医療サービス全体の満足度向上につなげる。Royal Patientのポータル画面からは、検査の予約登録、診断結果や診断画像にアクセスすることも可能。
    Progressive Radiology Focuses on the Patient Experience by Successfully Deploying RoyalPay® From Royal Solutions Group - Improving Estimates and Eligibility

【要素技術】

  • 7月は国際視力矯正月間である。レーシックをはじめとする視力矯正手術は20年の間に目を見張る技術革新を遂げている。多くの手術体験者が、結婚や出産に次ぐ、人生の5大ニュースの一つとして視力矯正手術を挙げる。角膜屈折矯正学会の医師や外科医が、家族や知人など大切な人に矯正手術を行った体験をウェブで共有し、一般からの投稿とともに視力矯正手術の安全性と効果の啓発を促す。
    July is Global Vision Correction Month

  • ウェアラブルヘルスケア機器の市場はアメリカで2025年までに870億ドルに成長する見込み。肥満、糖尿病などの持病対策となる、カロリー消費量、歩行距離、睡眠、心拍数など、フィットネスに関するモニタリングが主流に。さらに、スポーツの試合中やトレーニング中のパフォーマンス、ケガの治療経過のモニタリングなどに用途が拡大される。
    Wearable Medical Devices Market to Hit $87 Billion by 2025: Global Market Insights, Inc.

  • 「Vitargo」が世界総合格闘技大会(World MMA Award)の公式スポーツドリンクに認定。格闘家は5ラウンドを戦い抜くことが求められる過酷な大会であるが、Vitargoを飲むと脳と体に通常の2倍の速さでグリコーゲンと水分を補給でき、高い疲労回復力を実現できるという。しかも、おいしいと評判だそうだ。科学的なアプローチで、体重制限とパフォーマンスの最適化を目指す世界中の格闘家をサポートしてきたことが評価された。回復のスピードが最も重要とされる格闘技の世界で、今後科学的なデータ活用に焦点がシフトしている。
    Vitargo is selected official sports drink for rehydration, refueling and recovery supporting the 11th Annual World MMA Awards

  • アグリフードビジネスにおけるブロックチェーン(BC)技術の活用について、Research and Marketsが報告書を発表。BC技術を利用した、アグリフーズ・サプライチェーンにおける食品偽装や誤った取り扱いなどを防ぐ追跡システムや、食品廃棄物管理、コスト、作物保険、フェアトレードの効率化についてまとめている。アグリ業界におけるBCの影響・トレンド分析から、企業のユースケース、応用法、利点や課題について、未来のBCを活用したビジネスロードマップを取り上げている。
    Blockchain Adoption in the Agri-Food Industry, 2019 - BC Start-ups Expected to Disrupt the Agri-Food Industry

  • アンチエイジング・マーケットの予測(2019-2024)について、Resarch and Marketsが報告書を発表。2018年には5.4兆円の市場規模であり、2024年にはさらに8.5兆円に成長することが予測されている。見た目年齢がますます重要視されるようになる中、アンチエイジング製品の需要が高まっている。スキンケアグッズだけでなく、美容整形、豊胸手術、ボトックス注射なども増加傾向。製品とサービスの高価格帯や、有害物質を含む偽物商品がマーケットの成長を阻む要因となっている。フランスが世界一の市場規模を誇る。
    Global Anti-Aging Market Outlook 2019-2024: Historical, Current & Future Market Trends and Key Drivers & Success Factors

  • 2019 Medical Innovation Summitが10月21日~23日に米オハイオ州のクリーブランドで開催される。ヘルスケア、患者ケアを推進する新たなテクノロジーやアイデアを共有する場として、変化を実現するメソッド、モチベーション、マンパワーにアクセスできるネットワークの機会を提供。ホームページ上で、昨年のイノベーションのTOP10を紹介しており、1位はオピオイドの代替策となる新たな鎮痛セラピー、2位はヘルスケアにおけるAI活用、3位は急性脳卒中治療法であった。
    2019 Medical Innovation Summit Caring for Every Life through Innovation

  • より身近で新しいがん治療法として、2007年に発表されたジクロロ酢酸ナトリウム(DCA)。ミトコンドリアのピルビン酸脱水素酵素を阻止することで、効果を発揮。今回、Altogen研究所が独自研究を行い、DCAの類似体であるDCAHとDCMAHを、さらなる研究対象に絞った。神経膠芽腫の治療に使用される化学療法薬と同等の効果を発揮し、中毒性を最小限に抑えることが期待されている。もともとDCAHとDCMAHは有機化学合成に使用される単純な分子体であり、低コストで大量生産可能である点も注目されている。
    Laboratory Testing of Known Compounds for Cancer Treatment Efficacy

  • ISTH国際血栓止血学会(オーストラリア)が血友病の遺伝子治療に関するグローバル教育イニシアチブを7月6日〜7月10日に開催。医師、学者、医療の専門家向けに、新たな血友病の治療法として注目を集めている遺伝子治療に関する学びの場を提供する。遺伝子治療の基礎知識、取り組み、研究や治療効果の分析などにおける最新の知識を伝承し、最適な患者ケアを目指す。
    ISTH Announces Launch Of New Global Education Initiative In Gene Therapy For Hemophilia

(タイトル部のImage:Photobank -stock.adobe.com)